2021 Fiscal Year Research-status Report
Process of Changes with Renewal/Loss of Tenement Houses in densely built-up area of wooden buildings
Project/Area Number |
20K04857
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山本 俊哉 明治大学, 理工学部, 専任教授 (50409497)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 木造密集市街地 / 長屋 / 新築狭小戸建住宅 / リノベーション / 不燃領域率 / 家守 / サステイナブル・ファイナンス / ソーシャル・ビジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、墨田区京島地区の長屋の更新及び滅失に伴う市街地変容のプロセスを解明するため、2年目の本年度は主に、建築確認調書・登記情報・住宅地図の調査と関係者インタビューをもとにして、不燃化特区に指定された2013年からの8年間に新築住宅の動向を把握し、密集市街地整備事業とそれに係る助成制度並びに民間活力のメガニズムの作用による長屋の除却・建替えのパターンを明らかにした。すなわち、従前の敷地面積(敷地統合を含む)が300㎡以上の場合は中層集合住宅が新築され、それを下回る場合は敷地分割して狭小戸建住宅が新築されるパターンが見られた。中層集合住宅は8棟(4%)しか新築されず、新築住宅の約8割は木造の準耐火建築物の戸建住宅であり、その半数は法人建築主が土地を買収して長屋を除却、敷地分割して新築した狭小住宅であった。これらの法人建築主は、時間が余計にかかる助成制度は活用していなかった。一方、幅員6m以上の道路整備に伴う新築住宅は1割に満たず、ほとんどが密集市街地整備事業とは関係なく建て替えられていた。 前年度明らかにした大規模地権者とその賃借人による長屋更新の対応行動については、長屋更新の担い手の現代版家守が越後三人男以外の長屋のリノベーションにも広げているが、経営基盤は脆弱であるため、資金力のある社会的企業が一時的に借地権を買取り、現代版家守らに貸すサステイナブル・ファイナンスによる長屋の改修プロジェクトを複数進めてきたことを明らかにした。サステイナブル・ファイナンスは、事業を継続するための支援、後継者や起業者への支援、店舗とのマッチングを進めるソーシャル・ビジネスであるが、土地と建物を保有して展開するには一定の限界がある。そこで、金銭や相続の都合で長屋文化を継承してきた土地や建物を失わないよう、その所有権を託す受け皿となる一般財団法人設立の検討プロセスを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、現地における調査補助員(学生バイト)の協力を得た対面調査は計画通り十分に実施でできなかったが、研究計画書に記した4つの調査研究のうち3つについては、以下の理由で、概ね順調に進展している。 ①長屋の除却・建替えのパターン分析;初年度は越後三人男所有の長屋に関する市街地変容プロセスを明らかにした。2年目の今年度は、上記の「研究実績」の通り、建築確認調書、登記情報および住宅地図の経年調査により、不燃化特区指定後の2013年からの8年間の新築動向を把握し、道路整備等の公的事業と行政施策並びに民間活力のメガニズムの作用による長屋の除却・建替えのパターンを明らかにした。 ②大規模地権者とその賃借人による長屋更新の対応行動の変化の把握・分析;初年度は越後三人男所有の長屋更新の対応行動の変化を明らかにした。 2年目の今年度は、上記の「研究実績」の通り、長屋更新の担い手の現代版家守が社会的企業の支援により、リノベーションを進めるとともに、京島地区を中心に長屋の更新を進めるコミュニティ財団の設立に向けた動きを明らかにした。 ③モデル街区における市街地変容のプロセスの把握・分析;初年度は越後三人男所有の長屋が残る3地区(街区群)の市街地変容のプロセスを把握した。 2年目の今年度は、上記の「研究実績」の通り、法人建築主が土地を取得して長屋を除却し、戸建て住宅と中層集合住宅に建替えしたいくつかの街区の市街地変容のプロセスを把握した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度の次年度は、密集市街地の更新に関わる主要プレイヤーでもある居住者のうち、不燃化特区指定後に新築した住宅を取得して転入した居住世帯の居住意向を把握し、長年密集事業を進めてきた京島地区の最近10年間における市街地変容のプロセスを解明する。また、地域住民が参加する京島まちづくり協議会や地域運営のアリーナ形成に関わる市民組織等の関係協議組織の最近10年間の活動内容、構成員の変化を把握・分析する。 これらに過去2年間の研究成果を重ね合わせ、長年密集事業を進めてきた京島地区の最近10年間における市街地変容のプロセスを、長屋を建設・所有してきた大規模地権者とその土地建物を買収または賃借する関係事業者の立場から構造的に明らかにする。また、長屋の解体と更新をめぐる大規模地権者と地区外からの転入者と両者のマッチングに関わる主要プレイヤー(地権者・行政関係者・居住者・事業者)の対応行動と関係協議組織の変化を整理し、それを通して50年ほど前から取り組んできた京島地区における密集市街地整備事業が果たした役割を考察する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため、計画していた調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、その調査及び国内外での研究発表にその費用を使用する計画である。
|
Research Products
(5 results)