2021 Fiscal Year Research-status Report
公共サービスをめぐる紛争の解決モデル:ラテンアメリカを事例として
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20K04995
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大石 晃史 青山学院大学, 国際政治経済学部, 研究員 (60814944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10736226)
和田 毅 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20534382)
牧田 裕美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00882862)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公共サービス / 社会運動 / 水資源 / ラテンアメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度(2年目)は、現地調査、水資源データベースの分析、ネットワークモデルの解析などにより、公共サービス(特に水道事業)をめぐる紛争がどのように生じるのか複眼的に研究を進めた。第一に、ボリビア東部サンタクルス県を中心に2ヶ月間の調査を行い、極めて優れた水道協同組合がなぜサンタクルス県のみで機能しているのか、水道協同組合のリーダーにインタビューを実施した。その結果、サンタクルス県の経済発展の歴史、それに伴う経済的エリートの誕生、彼らの地理的アイデンティティーがサンタクルス県における独自の水道協同組合設立に重要な影響を与えていることが明らかとなった。第二に、より一般的に水インフラをめぐる紛争のメカニズムについての実証的なパターンを把握するために、DHSデータセットから得られた水アクセスの指標と、Geo EPR、MERIT Hydroの各データベースから得られた民族構成及び物理的水資源の存在の関係について調査し、複雑な民族構成が水アクセス指標に負の影響を与えうる(ペルーの例)ことを示した。ただし、この影響はどの国でも一般にみられる傾向ではなかったため、水道事業供給の体制等の相違を踏まえた分析を行う必要がある。第三に、紛争をかかえたアクター間の関係性のダイナミクスについて理論的な立場から仮説を構築するために、符号付きネットワークの時間発展モデルである間接互恵モデルを計算機シミュレーションや平均場近似などの手法で分析した。その結果、ネットワーク密度による構造バランスの相転移が発見され、紛争における二極対立の発生がアクター間の関係性の密度に依存する可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初プロジェクトメンバー全体で幅広く行うことを予定していた現地調査がコロナ禍の様々な制限により、これまでの2年間では十分に行えず、現地調査を全く実施できなかった初年度に比べれば、今年度(2年目)は部分的に実施することができたという点では大きく改善したものの、未だに当初の計画通りの進捗状態には至っていない。その結果として、特に紛争アクター間の関係性の変遷について現地調査に基づく新規データを構築する作業が遅れており、最終年度(3年目)に向けて計画を修正しつつ研究を実行する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(3年目)もコロナ禍のために所属研究機関・国内外政府による制限がどの程度安定して緩和されるか、その結果として現地調査がどこまでの規模で実施できるかは不透明である。当初予定していた新規データセット構築のための現地調査を1、2年目の不足を取り戻せるほどに実施できることは期待できない。それゆえ、現地調査による新規データの構築・分析・モデル化という初期プランのまま、プロジェクト全体で共通の独自データを分析する方向に固執するのはリスクが大きい。よって、最終年度は(2年目に実施したように)ボリビアの水道民営化事例の現地調査、ラテンアメリカ全体の水紛争の実データ分析、紛争ネットワークのモデル分析をそれぞれ並行して進め、それらの知見を統合することで公共サービスをめぐる紛争がどのような状況で勃発・激化しやすいのかということを総合的に明らかにすることを目指す。現地調査では、2年目の調査で得られた資料・知見を整理・出版するとともに、追加で3ヶ月程度ボリビアでエルアルト水戦争に関する資料収集を行い、ボリビア国内での事例比較を進める。計量分析では、水アクセスのデータを引き続き分析し、水道事業供給の体制等の相違や政治的紛争との相互作用を精査する。モデル分析では、これまで注目してきた定常的な二極対立構造の形成に加えて、動的な紛争の拡散パターンを調べることでどのような条件下で紛争が拡がりやすいのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していたラテンアメリカ地域へのフィールドワークの実施がコロナ禍で困難となったため、さらにはフィールドワークにおいて得られたデータを管理・分析・出版するために利用する予定であった経費の執行がフィールドワークの中止に伴い困難となったために次年度使用額が生じた。 最終年度は旅費を利用してラテンアメリカ地域への現地調査を行う。また、物品費を利用して計量分析・モデル分析に必要な機材や資料を調達し、これまで行ってきた水アクセスデータの計量分析および符号付きネットワークモデル分析を拡張する。その他の経費をデータ共有や論文執筆のためのクラウドサービス使用料金にあてる。
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Research Products
(9 results)