2022 Fiscal Year Research-status Report
公共サービスをめぐる紛争の解決モデル:ラテンアメリカを事例として
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20K04995
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
大石 晃史 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 研究員 (60814944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10736226)
和田 毅 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20534382)
牧田 裕美 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00882862)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 水紛争 / 社会運動 / インフラ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はボリビアおよびメキシコで現地調査を行い、それぞれの地域での水インフラをめぐる紛争について分析を深めることができた。 ボリビアでの現地調査では、これまで研究の蓄積の乏しいボリビアにおける第二次水戦争の資料の所在を明らかにすることができた。現地研究者にもインタビューを行い、第二次水戦争は地域差や歴史の違いで社会運動の形態に差異が出ることが顕著な事例でありることなどについて新しく情報・意見交換を行うことができた。第二次水戦争は、資料入手困難さから研究があまり行われてこなかった紛争であり、今回の調査で資料・情報収集が進んだ意義は大きい。 メキシコでの現地調査ではメキシコシティの水道事業の官民連携(PPP)に関する分析を深めることができた。当該事業では、gradual approachと呼ばれる段階的なアプローチを用いて、料金収受の民間委託からスタートしたが、最終的に水道サービスの改善に向けたPPPの段階までたどり着くことができず頓挫した。先行研究では、インフラサービス向上のために同時期に行われた地方分権改革とPPPを同時に行うことが政治的に困難であることが指摘されており、メキシコシティもそうした事例の一つであると考えることができるが、一方で、メキシコシティの場合は地方分権自体が、その理念に基づいた改革が実施されなかったことがPPPに対して悪影響を及ぼしていることがわかった。従って、地方分権改革とPPPが理念上同時に実施することが難しいというわけではなく、同時実施を図る場合は地方分権改革を適切に行うことが求められることが政策的含意として導かれる。 また、これらに加えてより広汎な水紛争データベースの統計分析や時系列ネットワークデータに対する離合集散の可視化といった量的分析・手法的実験も進めることができ、現地調査で得られた知見などと合わせてより統合的な議論を展開することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まではコロナ禍の影響が大きく現地調査に対する制約が極めて厳しかったため研究計画に大きな遅れが生じたが、今年度は制限もある程度は緩和されたためボリビアおよびメキシコでの現地調査を行うことができ、研究を大きく進展させることができた。前年度までの遅れの影響を完全に払拭できた訳でないため、現地調査の結果などの分析や研究成果としての出版・公開にはまだ当初計画からの遅延があるものの、概ね順調に進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでコロナ禍の影響で現地調査が大きく制限されていたことなどもあり、今年度までの現地調査の結果が十分に分析されて研究成果として発表できているとは言い難い状態にある。そこで次年度は、これまでの現地調査の結果を中心として、その分析をより深め学術誌や国際学会における出版・報告を行う予定である。ボリビアおよびメキシコの事例分析については、これまで質的な分析のみであった部分についても追加的な量的分析を行うことを計画している。ボリビアの事例については、現地協力者からさらに資料を提供してもらえる可能性があり、交渉が進展した場合にはその分析も次年度に行う予定である。また、これまで本研究で行った複数の事例分析と一般的なデータ分析についてどのように包括的な議論ができるかも検討したい。
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Causes of Carryover |
前年度までコロナ禍などの影響で現地調査に制約があったために生じた遅れがまだ完全には挽回できておらず、当初研究計画全体からの遅延が残ったために次年度使用額が生じた。次年度においてはこれまでの現地調査などの結果を分析し、学術誌や国際学会で発表する予定であり、そのための英文校正費用、論文掲載費用、学会参加費などとして使用するとともに、追加的な分析において機材・書籍が必要になった場合にはその購入費用に当てる。
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Research Products
(4 results)