2021 Fiscal Year Research-status Report
都市型限界集落を対象とした地域コミュニティ主体の包括的危機管理モデルの構築
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20K05011
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
細田 聡 関東学院大学, 社会学部, 教授 (60270542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 弘美 関東学院大学, 社会学部, 准教授 (00732801)
元木 誠 関東学院大学, 理工学部, 教授 (20440282)
永田 真弓 関東学院大学, 看護学部, 教授 (40294558)
施 桂栄 関東学院大学, 人間共生学部, 教授 (40370192)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 緊急事態 / 要援護者 / 最優先援護世帯 / 援護ポテンシャル指数 / 要援護世帯MAP |
Outline of Annual Research Achievements |
近隣自治会地域の自治会会長、地域防災グループメンバー、民生委員などと地域防災について数回にわたり協議を繰り返した。一連の協議に基づき、民生委員と地域防災グループが毎年実施する援護希望調査を活用することとした。この調査の主たる目的は、要援護者を把握し、災害時に安否確認と避難行動のサポートに資するデータを得ることである。定例の項目に、緊急事態発生時ならびに事態が治まった時点での援護希望有無および援護希望先を問う質問項目を付加し、2021年10月から11月にかけて実施した。有効回答世帯数は762世帯(有効回答率77.6%)であった。この自治会中心の質問紙調査は、次年度以降の本調査のプレ調査と位置づけことができる。 この調査の分析にあたっては、個人情報を担保する旨の確認書を手交の上、質問紙対象地域および27地区(各地区約30世帯)ごとに居住者、援護希望者等を算出した。その際、要援護者を援護希望であり世帯内援護者が不足し外部援護が必要な者と定義した。また、要援護者が居住する世帯を最優先援護世帯、援護希望者と世帯内援護者数が等しい世帯を優先援護世帯と定義した。そして、また、近隣地域への援護可能な人数を援護ポテンシャル指数と定めた。 分析の結果、最優先援護世帯は107世帯、優先援護世帯は44世帯であることが判明した。また、対象地域全体では、1人の要援護者に対する援護ポテンシャルは10.6であった。そして、地区によって、当指数が5.0以下、その一方で50.0以上と、援護ポテンシャルが大きく異なるが明らかとなった。さらに、各地区で最優先援護世帯と優先援護世帯の緊急時要援護世帯MAPの素案を策定した。 上記の調査結果に加え、地域コミュニティにおける災害対策研究に基づく現状と課題をマトリックス方式で分析した「地域コミュニティにおける災害対策に関する研究の現状(永田他, 2022)」を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に予定していた地域防災に関する面接調査を今年度は実施することができた。自治会役員、防災ボランティアメンバー、民生委員を対象に数回に分けて行った。これによって、本研究の主目的である「誰一人取り残すことのない緊急時対応」を目的とした地域住民への質問紙調査を行うにあたっての課題が見出された。たとえ、自治会役員や民生委員へ十分に説明し納得を得た上での調査であっても、個人情報の取扱いなど回答者の納得が得られていない場合には、質問紙調査の実施自体が困難となる。そのために、27地区の班長や地区長に対して、丁寧な説明会を何回か繰り返し実施する必要があることが明らかとなった。 今年度は、自治会主体の調査に一部質問項目を付加する形での質問紙調査とならざるを得なかったものの、自治会での報告会で役員から要援護者MAPや援護ポテンシャル指数などの視点から分析に有効性があることの認識が得られた。また、対象地域の地区ごとに要援護者数および援護ポテンシャル指数の差異が明確となった。これらのとから、次年度の本調査の実施に向けての基盤が整ったと考えられる。 しかしながら、今年度に実施予定であった本調査が来年度に延期となり、また、実施に向けての地域コミュニティへの説明の不十分さが認められた。より精緻な実施スケジュールを再策定する必要が生じたといえる。また、本調査では、個人情報に十分に配慮しつつも、一定程度の居住状態や援護希望理由など個人情報に踏み込まざるを得ない質問内容になることが想定される。そのため、自治会や民生委員との綿密な協議も必要となる。 以上の課題が山積した状態であることから「やや遅れている」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度上半期に対象地域の自治会班長および地区長に対して質問紙調査の目的・内容・方法についての説明会を繰り返し実施する。この説明を班長・地区長が担当地区居住者に説明を行うこととする。また、不明点などがあれば随時これに回答する。 2022年度下半期に、大地震の発生を想定した質問紙の全数調査を実施する。この調査では、要援護者あるいは要援護世帯の把握、他者援護の可能性、地域住民の防災ニーズ、避難開始のトリガー、当事者としての対応行動可能性、携帯電話など情報送受信機器の利用状況などについて明らかにする。これに加えて、災害時要援護者においては、事前にどのような避難準備が必要か、発災時にどのような援助を誰に要請したいかなどについての質問項目を設ける。 回答データを、前年度に案出した援護ポテンシャル指数を精緻化するとともに、援護世帯MAPを作成する。そして、これに基づき、地域コミュニティでの具体的な緊急時対応策を協議しつつ策定を試み、リスクマネジメントを地域コミュニティに導入する。地域住民自身が居住地域の特徴や強靭性・脆弱性を認識し、大災害が発生した際に地域の援護ポテンシャルに応じた行動プランを策定する。そして、必要とあらば、自治体、消防署、病院など関係諸機関とリスクコミュニケーションをとり、リスク低減に向けた解決策を図る。 2023年度は、クライシスマネジメントを地域コミュニティに展開する。また、災害時にドローンを活用する際の情報送受信システムを構築する。併せて、ドローンを活用する際の必要な体制や連絡系統の整備を行った上で、小中学校で実施される避難訓練に地域住民も参加し、これを活用した誘導・避難の実証実験を行い、地域のクライシスマネジメントの実効性を検証する。また、避難所での各種感染症対策、人工呼吸器など装着した乳幼児や在宅療養者、感染症罹患者など避難困難者への援護方法を考案する。
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Causes of Carryover |
今年度実施する予定であった地域コミュニティを対象とした質問紙調査は、COVID-19の感染拡大に伴い、次年度に実施することになった。約1200世帯(居住者数約2000人)に対して全数調査を予定している。質問用紙の印刷、回収封筒を同封して班長及び地区長を経由した配付を予定している。また、回収についても班長・地区長を予定しているが、これに困難がある場合には郵送可能とすることも想定する。回収データの入力にあたっては業務委託とする。また、詳細な要援護MAP作成についても同様に委託業務する予定である。 本研究が対象とする地域コミュニティ以外でも各地において地域防災について先進的な取り組み行っている自治体や地域を訪問し、研究領域の拡充を図ることも予定する。また、現在対象としている地域コミュニティは高齢者率が高い一方で自治会が機能的な活動が展開されている。これに対して、若年者層が多く居住し近隣との関係性が高くない地域コミュニティも存在する。このような地域での防災体制の取り組み現状を把握することで、汎用的な地域防災のリスクマネジメントの方法を検討する。 これまでの本研究では、対象地域居住者が懸念する自然災害は大地震である。しかし、豪雨や台風などによる風水害・沿岸地域の津波・火山帯での噴火など各地域によってリスク評価される自然災害は異なる。これに応じたリスク対応の差異も検討することとする。
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Research Products
(1 results)