2020 Fiscal Year Research-status Report
ハイエントロピー合金物性探索のための機械学習を取り入れた物性自動探索
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20K05068
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木野 日織 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主任研究員 (70282605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自動化第一原理計算 / ハイエントロピー合金 / 機械学習手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度物質として知られる固溶状態相であるハイエントロピー合金は3d遷移金属元素などを含む場合に磁性を持つ可能性がある。構造から柔磁性になり、高い異方性や大きな保持力を持つNd磁石などとは別の用途が存在する。また、様々な元素が混じった合金であり、単結晶として原理的に大きな電気抵抗を持つことも期待され、現在フェライトが担っている柔磁性材料の代価となりうる。 今年度は四元等比ハイエントロピー合金の物性評価を用いて行った。固溶状態相では原子位置の長距離秩序はあるが、各元素はランダムに分布する。このため、VASPなどの計算では非常に大きな周期格子を作成して計算が行われるため、簡単な物質にも関わらず高速な物性値評価ができない。この困難を回避するために構成元素の不規則性をグリーン関数の一体自己エネルギーとして混ぜるコヒーレントポテンシャル近似を用いた。これを実装するGreen関数法を用いた第一原理計算であるKKR法の手法の自動化を行う際の困難は、価電子数を評価するエネルギー積分下限値を入力とせねばいけない点である。しかし、このエネルギー積分下限値は一度収束計算をしなければその値は分からない構成元素依存の量である。この自動化を行いKKR法の網羅自動計算を実現した。 KKR法を用いて磁化だけでなく、リヒテンシュタインの方法による原子間磁気相互作用の評価を通じてスピンハミルトニアンを作成し、磁気相転移温度を評価し、また、元素不規則性の効果によるGreen関数の虚数部分を評価できることで、久保グリーンウッドの公式を用いて残留電気伝導率の計算も行った。4f系を除いて金属元素を中心に38元素の組み合わせによる四元等比ハイエントロピー合金のBCC構造、FCC構造それぞれに対して約7万個、合計約14万個の物質量計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイエントロピー合金研究の最も大きな障害は組成元素組み合わせが大きすぎることであり、効率的な計算が必要である。そのため本研究ではコヒーレントポテンシャルによるKKR法を用いて計算を行った。更に、KKR法の自動化の困難であるエネルギー積分下限値の自動設定を行った。更に、KKR法の収束の高速化に関して自動化アルゴリズムの見直しを行い、より安定な収束を行うことができた。 物性量の予測モデル作成を行い、磁気相転移温度はある程度妥当な回帰予測モデルの作成ができ、残留電気抵抗率は相関係数0.95の回帰モデル作成ができた。また、残留電気抵抗率の回帰モデルでは元素周期律表の列グループの説明変数重要性が高く、元素周期律表の列グループに対して相関係数0.8以上の予測モデル作成が可能である。更に、個別にある系統で、例えば、MnFeCoX系列でXを変えて残留電気抵抗率を表示すると周期律表の行方向はほぼ同じ値を持つが、列方向に大きく変化することが読み取れ、回帰から分かる全体の傾向でなくMnFeCoXなどのXを変えた場合の変化も理解できることが分かった。また、大きな残留電気抵抗率に関しては従来はd電子のPDOSが大きいこととspin disorderが原因であるとされてきたが、膨大なデータを解析することでそれ以外の場合もあることが分かった。 磁気相転移温度と残留電気抵抗率はある程度妥当な回帰予測モデルが作成できることから多目的最適化のシミュレーションを行った。目標領域を約800K-1000Kの磁気相転移温度、電気抵抗率を約75-110μΩcmとして約230回で目的領域の物性を持つ元素組み合わせを発見できることが分かった。更に、高い磁気相転移温度を持つ場合は、3d遷移金属元素を必ず含むという固体物理の常識由来の制限をつければ、より少ない回数で目的変数領域に達することが可能であることも分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は4元等比合金に対する計算を行っているが更に多くの元素組み合わせ、そして、異なる元素比率に対する計算を可能にする必要がある。現在は価電子数を評価するエネルギー積分下限値のために全状態密度を用いているが、元素別の状態密度に対しても同時に評価を行う機能を追加する。 電子状態収束の解析を行った結果、KKR法で収束しないもしくは収束が遅い場合は、極めて無駄な計算を数多く行っていることが分かった。この理由は価電子数を評価するエネルギー積分下限値がバンドギャップ外にあり不適切であったり、また、標準で用いる収束法が不適切であることが大きな理由である。データを集めることで価電子数を評価するエネルギー積分下限値の予測が機械学習で行えるようになることが期待されるのでその解析を行う。 計算物性データを解析したところ、データクレンジングの必要性と、不適切結果に関しては再計算を行う必要があることが分かった。この機能を追加する。 回帰モデルにはデータインスタンス間の説明変数間の類似度を用いる方法がある。電気伝導には高い予測性能を持つ回帰モデルが得られるが、既存説明変数を用いた場合に回帰モデルも予測性能を下げる問題点があることが分かった。その解決法の目処がついたので実装し予測モデル作成を行う。 14万件のデータから磁性についてのカクテル効果の解析を行う。本研究はcollinear spinの範囲で,実空間分布に関してはコヒーレントポンテシャル近似により一様な分布であると近似しているが、この場合でもTCが大きく下がる場合がある。リヒテンシュタインの方法による原子間磁気相互作用の評価を通じてスピンハミルトニアンの解析を通じて、個々の系に対してではなく、網羅データからこの原因を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延により、出張予定していた国内学会、国際学会が中止もしくはオンライン開催となり、国内出張も不可能であった。今年度も国内学会、国際学会がオンライン開催となり、国内出張も不可能に成ることが予想される。また、プログラム部品作成に時間が想定以上にかかっている。作成したデータの解析により重点を置いた研究を行いたいため、当初旅費に予定していた予算額を今年の当初の使用額とまとめ自動化カスタム部品の外注を行う。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] 木野日織2020
Author(s)
Development of Data-driven Methods as a bridge to Deductive Methods
Organizer
The 29th International Toki Conference on Plasma and Fusion
Int'l Joint Research / Invited