2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイエントロピー合金物性探索のための機械学習を取り入れた物性自動探索
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20K05068
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木野 日織 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 統合型材料開発・情報基盤部門, 主幹研究員 (70282605)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自動化第一原理計算 / ハイエントロピー合金 / 機械学習手法 / 法則獲得 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は4f系を除いて金属元素を中心に38元素の組み合わせによる四元等比ハイエントロピー合金(固溶体)のBCC構造、FCC構造それぞれに対して、磁化、磁気相転移温度を評価し、残留電気伝導率の計算を行い約7万個、合計約14万個の物質量データを取得した今年度はこの第一原理計算自動システムの一部を公開した。 今年度は機械学習手法を用いて法則を見出すことに成功した。残留電気抵抗率は元素の基本的な10の特徴量に対して、四つの構成元素に対する最大値、最小値、和、標準偏差操作を行った計40の説明変数を用い、ランダムフォレスト回帰モデルではテストセットのR2評価指標に対して0.96の高い予測性能値を持つ回帰モデルを学習することができた。更にこの回帰モデルをホワイトボックス化することで、周期律表のグループの平均値と標準偏差が最も重要な説明変数であることが明らかになった。具体的にはほぼ同じ周期律表グループの元素を用いた場合の残留電気抵抗率が小さく、異なる周期律表グループ間の元素を用いた場合は逆に大きいという法則を見出した。 上記の計算は四元等比固溶体が存在するとして行ったが、それらが作成できるか否かの評価は行っていない。四元等比固溶体の構成元素に対する存在の有無データを文献データから取得し、証拠理論と多元素間の類似度を用いて多元素組み合わせの存在有無の推薦システムを作成し、既存の推薦システムよりも少ない試行数で推薦できることを示した。推薦された物質を作成が可能なことを実験で確認し、この推薦システムの妥当性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は4f系を除いて金属元素を中心に38元素の組み合わせによる四元等比ハイエントロピー合金(固溶体)のBCC構造、FCC構造それぞれに対して、磁化、磁気相転移温度を評価し、残留電気伝導率の計算を行い約7万個、合計約14万個の物質量データを取得した。今年度はこの第一原理計算自動ソフトの一部を公開した。当初予定していた、元素別の状態密度に対しても同時に評価を行う機能については作業が遅れている。 今年度は機械学習手法を用いてこれらのデータの規則を見出すことに成功した。具体的にはほぼ同じ周期律表グループの元素を用いた場合の残留電気抵抗率が小さく、異なる周期律表グループ間の元素を用いた場合は逆に大きい。一方、文献によると二元系で微小ドープした乱れが微小なCu、Al導線でも周期律表に書くと同じ傾向が報告されている。今回の四元系は乱れが最も大きな場合であり、合わせてこの「法則」が残留電気抵抗率の一般的な傾向である可能性は高いだろう。 研究計画には無かったが等比固溶体の存在有無は根本的な重要な問題である。四元等比固溶体の構成元素に対する存在の有無データを文献データから取得し、証拠理論と多元素間の類似度を用いて多元素組み合わせの存在有無の推薦システムを作成し、既存の推薦システムよりも少ない試行数で推薦できることを示した。実験で推薦された物質を作成し、この推薦の妥当性を確認しているので、推薦システムは今後活用できる。この推薦システムソフトは公開している。 本研究で用いた一部の成果を用いて「Orange Data Mining ではじめるマテリアルズインフォマティクス」を出版した。物質科学を題材としてGUIを用いてデータ解析学手法とその意味を学ぶことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は4元等比合金に対する計算を行っているが更に多くの元素組み合わせ、そして、異なる元素比率に対する計算を可能にする必要がある。このために、現在は価電子数を評価するエネルギー積分下限値のために全状態密度を用いているが、データを調べたところ全状態密度に対して一見成功しているように見える計算が実際は破綻している場合もあることが分かった。これを回避するために、エネルギー積分下限値決定に統計的な扱いを行うアルゴリズムを考案したのでこれを試す。そして、アルゴリズムの安定性を評価し自動計算システムの公開を行う。 データ解析に用いた回帰、多目的ベイズ最適化などを行うソフトを開発している。磁気相転移温度と残留電気抵抗率はある程度妥当な回帰予測モデルが作成できることから多目的最適化のシミュレーションを行った。目標領域を約800K-1000Kの磁気相転移温度、電気抵抗率を約75-110μΩcmとして約230回で目的領域の物性を持つ元素組み合わせを発見できることが分かった。更に、高い磁気相転移温度を持つ場合は、3d遷移金属元素を必ず含むという固体物理の常識由来の制限をつければ、より少ない回数で目的変数領域に達することが可能であることも分かった。このソフトウエアを整備し公開する。 本研究はcollinear spinの範囲で,実空間分布に関してはコヒーレントポンテシャル近似により一様な分布であると近似しているが、この場合でもTCが大きく下がる場合がある。リヒテンシュタインの方法による原子間磁気相互作用の評価を通じてスピンハミルトニアンの解析を通じて、個々の系に対してではなく、網羅データから機械学習手法を用いてこの原因を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延により出張予定していた国内学会・国際学会が中止もしくはオンライン開催となり国内出張も難しい状態でであったため、次年度の出張費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)