2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K05086
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤井 孝太郎 東京工業大学, 理学院, 助教 (30635123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化物イオン伝導体 / 結晶構造解析 / 新材料 / プロトン伝導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,Dion-Jacobson型構造をはじめとしたCsを含む金属酸化物材料を中心に,新たなイオン伝導体を創出し,結晶構造解析によりイオン伝導と構造の関係を明らかにすることを目的としている.Csは利用できる陽イオンのなかで実質的に最も大きいことが特徴であり,Csを含む結晶構造は大きな格子をもち高いイオン伝導度に関係すると期待される.2020年度は,これまで報告したDion-Jacobson型構造に属する酸化物イオン伝導体について,一部の元素を置換した材料を合成・評価などを進めた.また,イオン伝導性が確認された材料については,中性子回折測定などを実施し,構造とイオン伝導の関係について研究を進めた.この他,同じく比較的大きなイオンサイズをもつアルカリ金属やアルカリ土類金属を含む材料についても研究を進め,新しいイオン伝導体を発見することにも成功している.たとえば非放射性で最も大きなアルカリ土類金属Baを含むBaNdScO4が新しいイオン伝導体であることを発見した.BaNdScO4は,過去に新しい構造型をもつ酸化物イオン伝導体として報告したBaNdInO4と類似した構造をもつ材料で,空間群P21/cに属するBaNdInO4よりも高い対称性であるCmcmに属している.イオン伝導の評価を実施したところ,酸化物イオン伝導体に加えて高いプロトン伝導度を示すことが明らかとなった.中性子回折法に基づく構造解析と,密度汎関数理論に基づく理論計算から,プロトンの流れやすい経路も明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であるCsを含む材料については,いくつかの新しいイオン伝導体を発見しており,現在,詳しい物性の評価と構造解析を進めている.一方,同じ思想で進めた研究についても新しいイオン伝導体を発見することができており,ある程度の広がりと新規性を持った研究を進められていることから,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,あらたかに発見したCsを含む酸化物イオン伝導体については詳細な物性評価と,主に中性子回折法を利用した構造解析を進めている.それにより高いイオン伝導度を示す構造的な要因を明らかにし,次の材料設計指針に活かして新材料探索をすすめる予定である.さらに,Cs以外の比較的大きな陽イオンを含む材料についても新しいイオン伝導体が発見できているため,そちらについても研究の範囲を広げて進める予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行の影響もあり,当初より研究の開始が遅れたことが一番の理由である.緊急事態宣言などによる出校の制限がかかったことで,合成や物性評価の開始時期が遅れ,学外の施設(放射光や中性子実験施設)での実験ができない場面があった.非常に大きな影響ではなかったため,繰り越された実験は,次年度に実施することでおおむね当初計画どおりに実施できる見込みである.
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Research Products
(24 results)