2020 Fiscal Year Research-status Report
周期反転電流電解法による高不純物含有粗銅の電解精製における不動態化の抑制
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20K05180
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
高崎 康志 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (50282158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金児 紘征 秋田大学, 名誉教授, 名誉教授 (20006688)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 銅電解精製 / アノード不動態化 / ガルバニック腐食 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、銅製錬の原料である鉱石品位の低下や、リサイクル原料などの二次原料処理量の増加により銅製錬で処理される不純物量は増加傾向にある。一般的な銅製錬の電解精製工程においては、アノード中の不純物量が増加すると銅の溶出反応が停止する不動態化が生じ易くなる。本研究では、銅電解精製におけるアノード反応をガルバニック腐食と捉え、通電中の電気化学計測と同時に試料表面の直接観察を併用して不働態化現象を解明することを目的としている。 実験は試料上部に実態顕微鏡を設置して、通電中の電気化学計測とともに試料表面の変化を観察できるように工夫した。令和2年度では基礎的な知見を得るため不純物元素として貴な銀と卑な亜鉛を選び、酸性硫酸銅水溶液中における銅-亜鉛、銅-銀および銅-亜鉛-銀、のガルバニック腐食特性を調べた。 実験の結果、銅線に銀線または亜鉛線を巻き付けるという簡易的な方法であっても銅線に対する銀および亜鉛のガルバニック反応の特徴的な挙動を捉えることができた。まず、亜鉛の溶解は銅によって加速され、銅の溶解は銀によって加速されること、そして通電下ではその効果がさらに顕著になることが確かめられた。また、銅表面の硫酸銅と思われる物質の晶出と不動態化、銀の溶解や銀線上での優先的な酸素発生も観察できた。さらに、銅線上に銅が電析する条件では、銅線表面の銅濃度が低下するため銅濃度が低下したと思われる溶液の上昇流が明確に確認できた。 以上の結果から、粗銅金属の不純物の溶解性を通電前の腐食試験で予測することが重要であることを明らかにした。さらに、試料観察結果と電気化学計測結果と対比して不働態化現象に関連する要因を見いだせる可能性を示唆することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リサイクル原料を主とした高不純物含有粗銅を現行の電解精製プロセスで処理することを考慮し、不純物含有量の高い銅合金の電解精製試験を行いアノードの不動態化を抑制する要因について基礎的な調査を行うことを目的としている。 令和2年度の研究では、銅線と亜鉛線および銀線を用いた腐食試験を行うことで銅の溶出挙動を調査し、その特性評価を行った。実験は実体顕微鏡を設置することで電気化学測定と同時にその場観察を行い、亜鉛の溶解は銅によって加速され、銅の溶解は銀によって加速されること、そして通電下ではその効果がさらに顕著になることが確かめられた。また、銅表面の硫酸銅と思われる物質の晶出と不動態化、銀の溶解や銀線上での優先的な酸素発生も観察できた。さらに、銅線上に銅が電析する条件では、銅線表面の銅濃度が低下するため銅濃度が低下したと思われる溶液の上昇流を明確に確認することができた。 以上の結果を、一般社団法人資源・素材学会2021年度春季大会にて「銅電解精製における銅アノードの不動態化におよぼす不純物のガルバニック腐食」(講演番号 3K0201-07-03)と題して学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
銅のガルバニック腐食反応についてより詳細な調査を行う。具体的には実際の銅製錬において銅アノードに含有される元素を主に選択しその影響について電気化学的な測定とその場観察を行う。銅が腐食しやすい条件は銅の溶出が生じやすくなることであるから不動態化の要因となるため、その抑制要因を追求する。 研究項目としては、銅合金アノードの組成や電解液があげられる。アノードの組成については銅電解精製の不動態化においてその要因となる元素であり、かつ操業においては収益面からできるだけ含有量を高くしたい銀を中心とする。他の不純物としては、リサイクル原料に多く含まれ銅電解精製では不溶性のスライムを形成する鉛、アンチモン、比較的卑な元素でその濃度が高まると不動態化に影響するといわれているニッケルに注目する。電解液は一般的な液組成を中心に、銅、硫酸、ニッケルの濃度だけでなく、銅の電析を滑らかにするために添加されている添加剤の影響についても調査する。さらに、溶液中の不純物イオンやpH、溶存酸素の影響を知るためには急激にそれらの濃度を変化させて調べる方法が効果的である。具体的には電位掃引しながら周期的に溶液を注入すると不働態域で注入と共に急に電流が増せば、その溶液で不働態が破れたということになる。また活性化域で液注入して急に電流が低下すれば、その液は不働態促進液であると判断できる。そこで、自動マイクロピペットで高濃度の不純物溶液、酸・アルカリ溶液、酸素ガスなどを周期的に注入してそれに対する電位応答や電流応答を調べる。また、光学的に表面変化を観察する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により実験活動が制限され、令和2年度に導入予定であったバイポーラ電源を購入しなかったことと、学会に参加するための旅費を使用しなかったことによる。 バイポーラ電源は令和3年度に導入予定である。旅費についてはコロナ問題の状況が改善し、学会開催地に移動できるようになれば使用する予定である。
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Research Products
(1 results)