2022 Fiscal Year Annual Research Report
湿式プロセスにより作製した磁性絶縁体薄膜を用いたスピン流熱電現象の物性解明
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20K05255
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 啓介 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50721792)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピンゼーベック効果 / YIG / 磁性ナノ粒子 / 共沈法 / ポリオール法 / グラニュラー構造 / 熱電変換性能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実施計画では、「異常ネルンスト効果を利用した起電力向上の試み」という題目で研究を実施する計画であった。実施した内容としては、YIGのナノ粒子間に数十~数百nmサイズのPt微粒子をグラニュラー化させ、表面におけるPt接触面積の増大と、Pt微粒子を界面に析出させることで界面におけるスピン流増幅効果を狙い、起電力の向上を目指した。 化学合成法である共沈法、ポリオール法と大面積化に適したスピンコート法を用いて、Si基板上に多結晶YIG -Ptグラニュラー膜(0≦X[Pt%]≦6.8)を作製し、膜の結晶構造、微細構造、磁気特性、表面電気伝導率(σ)およびSSE電圧について調べた。 YIG-Pt膜は、SEM観察とEDXによる組成分析の結果から、Ptの割合が0.3≦X≦6.8でグラニュラー構造を確認でき、膜厚は約100 nmであることを確認できた。XRDの結果から、多結晶YIGとPtが互いに非固溶である膜を同定できた。Pt/YIG-Pt膜の電気伝導率(σ)を測定したところ、Xの増加に伴いσが増大する傾向が確認できた。これは、Pt微粒子がYIG粒子間の空隙に入ることで、伝導寄与領域が増加し、σが増加したと考えられる。一方、YIG-PtのSSSE値は、0≦X≦6.8でX増加により、SSE電圧値が減少する傾向が確認された。これは、YIG中のPt微粒子の割合が多い場合、YIG中を伝搬するスピン波の挙動が不均一であることが原因であると考えられる。熱電変換性能(W)は、1.1≦X≦6.8の範囲でWが増加し、X=6.8でWがX=0と比べて1.6倍増加した。この結果は、非磁性Pt粒子の割合が希薄なYIG-Ptグラニュラー膜では、素子としての熱電変換性能が向上できたことを示している。本研究を通じて、YIG-Ptグラニュラー膜の構造とSSE起電力の相関を明らかにすることができた。
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