2020 Fiscal Year Research-status Report
Measurement of deactivation cross sections in diode-pumped alkali lasers and cross-check of them by a numerical simulation
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20K05366
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
遠藤 雅守 東海大学, 理学部, 教授 (60317758)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルカリレーザー / DPAL / セシウム / 反応レート / レート方程式 / Cs / ガスレーザー / レーザー誘起蛍光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体励起アルカリレーザー(Diode Pumped Alkali Laser=DPAL)は,高効率,大出力といった特徴を備えた新しいガスレーザーであるが,研究の歴史は浅く,基礎的な化学反応定数においてさえ信頼できる値が存在しない.そこで本研究は,DPALの未知の化学反応断面積を測定し,DPALの物理をより深く理解するための基礎的データを得ることを目的とする. 2020年度は,レーザー誘起蛍光法によってCsのメタン(CH4),エタン(C2H6)およびプロパン(C3H8)による失活反応断面積,混合反応断面積の取得が可能な装置の構築,および予備実験の実施が達成目標である. CH4とCs蒸気の混合ガスを常温(298K)の状態でセルに封入し,852nmのパルスレーザーで励起して,895nmの蛍光の時間波形を計測した.蛍光の減衰定数はCH4の分圧に対して1次関数で増加し,その傾きがCs-CH4間の失活反応断面積を与える.計測結果は,先行研究 [1]の値とよく一致し,本研究の手法の正当性が示された. 続いて,C2H6の失活反応断面積を同様の手法で測定し,それが,研究代表者が全く異なる手法で得た値[2]に一致することを確認した.これらのことから,本研究の手法による失活反応断面積の計測は確立されたと言ってよい. 最後に,C2H6の分圧を3桁の範囲で変え,蛍光ピーク強度と分圧の関係をシミュレーションプログラムと比較することで,Cs-C2H6の混合反応断面積を計測した.測定結果は先行研究[3]の値によく一致した. [1] M. A. Gearba, Opt. Express 27, 9676 (2019).[2] M. Endo, Opt. Engineering 57, 126104 (2018).[3] G. A. Pitz, Phys. Rev. A 84, 6 (2011).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の構築を完了し,CH4およびC2H6の失活反応断面積の測定,C2H6の混合反応断面積の測定に成功した.充分S/N比が高い蛍光シグナルを得るための試行錯誤に時間がかかったものの,最終的には統計的データ処理も駆使して,満足の行く結果を得た.高感度なフォトディテクターの導入も成功の要因である. 当初は心配された励起用ナノ秒レーザーの状態だったが,保存状態が良かったため簡易的なメンテナンスでカタログ値の性能が復旧した.しかし,パルス幅が予想より大きかったため,蛍光寿命の計測が可能なレーザー照射条件を探索するために時間を要した. 予備実験として先行研究との比較が可能な反応断面積を計測し,良い一致を確認した.したがって,計測方法の正当性が確認できた. 失活反応レートの測定には,数値シミュレーションを組み合わせた従来にない方法を採用しているため,モデルと現象の不一致が懸念されたが,シミュレーションでパルス波形を大きく変えても結果として得られる反応レートが殆ど変わらないというロバスト性が確認された.これは,励起パワーが飽和強度より数桁大きいため,光強度の時間変化がCs原子濃度に影響を与えないためであることがわかった.計画時には予期していなかった好ましい「想定外」であった.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた結果は,蛍光発生部とフォトディテクターの間に数cmのdead volumeがあり,蛍光の再吸収・radiation trapping現象の発生が懸念される.計算により,常温での計測では影響は殆どないことが確認されているが,デザイン的に防げるのなら防ぐのが賢明である. 2020度末に,dead volumeを5mmまで短縮した新ガスセルを設計製作した.2021年度は新ガスセルにて同じ測定を繰り返し,2020年度との一致を確認した後,CH4,C2H6およびC3H8による混合反応断面積,失活反応断面積の取得を完了する.成果は2021年度中に学術論文として公表の予定である.
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