2022 Fiscal Year Research-status Report
放射線グラフト重合による多機能型芳香族炭化水素高分子の開発
Project/Area Number |
20K05625
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
長谷川 伸 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (60354940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (10370462)
前川 康成 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 部長 (30354939)
澤田 真一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (70414571) [Withdrawn]
奥島 駿 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 研究員(任常) (80805672) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線グラフト重合 / 芳香族炭化水素高分子 / 結晶化度 / ラメラ周期構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、耐熱性及び機械特性に優れた芳香族炭化水素高分子へ、イオン伝導性等の機能をグラフト重合により付与した多機能型芳香族炭化水素高分子の創出と、反応機構に関する因子の解明を目的とする。今年度は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)膜へアニオン伝導性前駆体であるクロロメチルスチレン(CMS)の放射線グラフト重合について、溶媒アニール効果による反応加速効果を検討した。PEEKへのCMSグラフト重合について、加熱や溶媒浸漬等の前処理を行わない結晶化度11%のPEEKへのCMSグラフト重合は、反応時間24時間でグラフト率(GD)10%と、目標とするGD60%に全く到達しないことが分かった。これまで高い溶媒アニール効果を示したジオキサンを用いた前処理膜を用いたグラフト重合でもGD27%にとどまった。そこで、ジオキサンと類似の構造をもつ10種類のグルコール系の溶媒について、スクリーニングによる検討を行った。前処理にトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリジエレングリコールモノメチルエーテルを用いた際、グラフト重合反応は進行し、それぞれ、49、47、52%であった。前処理溶媒テトラエチレングリコールを用いて照射線量を160 kGyから720 kGyに上げた反応において、GD65%の試料を得ることができた。得られたPEEKグラフト膜は、トリメチルアミンで4級化した。4級化率80%の試料について、1M水酸化ナトリウムでOH化試料を用いて燃料電池試験を行った。水素・酸素を燃料として、評価を行ったところ、1200 mA/cm2で488 mW/cm2の高い出力を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画において、芳香族炭化水素高分子であるポリエーテルエーテルケトンへ十分なグラフト率の見いだせないモノマーであるクロロメチルスチレンを用いたグラフト重合反応において、グルコール系溶媒を用いた溶媒アニールを行うことで、グラフト重合反応が進行し、目標とするグラフト率(60%)を与える条件を新たに見いだせた。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリエーテルエーテルケトンを利用したアニオン型グラフト電解質膜を調製し、膜性能の最適化と耐久性を検討するとともに、グリコール系溶媒を用いた溶媒アニール効果について、ポリエーテルエーテルケトンの放射線グラフト重合反応と反応機構についての解明を検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定した実験の一部が実行できなかったことから、溶媒等の合成試料の購入が少なくなった。また、研究に関する打合せおよび外部発表が少なくなったことから、次年度使用額が生じた。令和5年度の物品費と合わせて、引き続き実験に必要な消耗品の購入に充てる。
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