2021 Fiscal Year Research-status Report
三次元立体・多孔質構造を有するカルコゲナイド系水素発生電極の創製と活性点解明
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20K05698
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
北沢 信章 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 電気情報学群, 教授 (60272697)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水熱合成法 / 酸化物ナノワイヤー / 水分解触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、三次元・立体構造を有する多孔質金属メッシュ表面に、非晶質カルコゲナイドナノ構造体を合成するための新規な材料プロセスを開発し、水分解に関与する活性点を明らかにすることによって、高効率水分解電極を創製するための新しい物質・材料化学を切り開くことである。令和3年度の研究では、昨年度に合成された(M,Co)(OH)2ナノワイヤー集合体を熱処理することによって得られたMCo2O4(M = Co2+,Ni2+,Zn2+)ナノワイヤー集合体の基礎物性と電気化学的性質について検討した。 水熱法によってニッケルメッシュ表面上に合成された(M,Co)(OH)2ナノワイヤー集合体(M = Co2+,Ni2+,Zn2+)を熱処理すると、脱水反応により水酸化物から非晶質の酸化物へ構造変化が生じ、ナノワイヤー構造を保持したまま、スピネル構造を有するCo3O4、NiCo2O4およびZnCo2O4ナノワイヤー集合体へと結晶化することが電子顕微鏡観察、ラマン分光測定およびX線回折測定から明らかとなった。また、X線光電子分光測定からNiCo2O4系およびZnCo2O4系の試料において、熱処理温度が上昇すると格子酸素に対する表面吸着酸素の比が減少することが明らかとなった。 熱処理により得られた酸化コバルト系ナノワイヤー集合体の水分解のための酸素発生過電圧について検討した結果、、格子酸素に対する表面吸着酸素の比が大きい試料ほど酸素発生過電圧が低下することが明らかとなった。以上の結果から、表面に酸素(水溶液中では水分子や水酸化物イオン)が吸着しやすいサイトが水分解活性点として作用して、試料の電気化学的性質に影響を及ぼしているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、水熱合成法による析出物質や熱処理生成物を透過型電子顕微鏡法ならびに電子線回折法によって明らかにする予定であったが、コロナ禍による制限のため実施することができなかった。また、硫化処理による非晶質カルコゲナイド化のための実験研究もコロナ禍による制限のため、本年度中に実施ができなかった。以上の理由により「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として(1)走査型・透過型電子顕微鏡および電子線回折法を用いて水酸化コバルト系ナノワイヤー集合体の初期成長過程、ならびに令和3年度に合成した試料の微構造を明らかにする。同時に(2)イオン交換法によって水酸化コバルト系ナノワイヤー集合体から、ナノワイヤー構造を保持したまま硫化物ナノワイヤー集合体を合成するための新規な材料プロセスを確立する。さらに(3)研究期間を1年延長し(申請予定)、合成された硫化物ナノワイヤー集合体の微構造、表面電子状態ならびに水分解特性を明らかにする計画である。なお、(1)項については試料合成は実施済みであり、(2)項については令和3年度中に予備実験がすでに終了している。
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Causes of Carryover |
一般競争入札により物品を購入したため、当初計画額(見積額)と契約額との間に相違が生じた。また、コロナ禍による出張制限のため旅費の支出額が当初の計画とは異なった。以上の理由により、次年度の使用額が生じた。この使用額は、研究実施に必要な消耗品類等を購入するために使用したい。
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Research Products
(2 results)