2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of Hydrophilic Boron Cluster Containing Molecular-Targeted Drugs
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20K05753
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
服部 能英 大阪府立大学, 研究推進機構, 特認講師 (50514460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | BNCT / ドデカボレート / 蛍光標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、診断と治療の一体化を可能とするセラノスティックな薬剤の開発研究が進展し、特に新規ながん治療への適用をめざした研究が盛んに行われている。本研究は、低侵襲ながん治療として注目されているホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に資する多機能な薬剤として、高い腫瘍選択性・集積性等の不可欠な機能に加え、動態解析を可能にするイメージング機能を賦与したセラノスティックなホウ素薬剤の創製を目指すものである。これらの多機能性を備えたコア分子として、20面体の籠型ホウ素クラスター分子であるドデカボレートを選択し、反応性に富むイオウ原子に「腫瘍集積性分子」とイメージングのためのポジトロン放出核種や蛍光性分子等の「標識化分子」を導入したホウ素薬剤の分子設計と合成を行い、セラノスティクなBNCT用薬剤としての有用性を評価する。 2020年度は、ドデカボレートへ種々の蛍光素子を導入し、蛍光標識化する手法について検討を行った。この結果、BODIPYなどの一部の蛍光素子は、単純にドデカボレートに導入した場合に、分解してしまうことが明らかとなり、蛍光素子を導入可能なドデカボレートの構造や蛍光素子の種類に一定の制限があることがわかった。 この知見を踏まえて、蛍光素子をドデカボレートに安定かつ効率的に導入する手法について検討を進めており、現在、いくつかの蛍光標識ドデカボレートの合成に成功している。さらに、蛍光標識化したドデカボレートに遊離のアミノ基やカルボキシル基などの、反応性の高い官能基を導入することにも成功しており、これを足がかりとして、腫瘍集積性分子に蛍光標識ドデカボレートを導入することが可能になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定していた蛍光素子の一部をドデカボレートに導入すると分解してしまうなど、想定していない結果が得られたこともあったが、2020年度内に、ドデカボレートを蛍光標識化する手法については概ね確立することに成功した。 また、腫瘍集積性分子を導入する方法についても検討を進め、これについてもその手法が確立できつつある。 このため、当初の想定通りではなかったが、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、標識化したドデカボレートにアミノ酸やペプチドなどの腫瘍集積性分子を導入を行い、セラノスティックな薬剤の開発をより具体化していく。 また、その一方で陽電子放出核種の導入についても検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、他大学との共同研究や学会参加などが不可能となり、旅費などの支出が大きく減額した。また、必要となる試薬や器具なども、特に海外メーカーの物品が購入できないなどの問題が発生し、予算執行については大きな変更を余儀なくされた。 次年度使用額分については、2020年度の反省を踏まえ、国内メーカー品で代替可能なものをピックアップする、また学会参加についても再考するなどするとともに、研究を加速するために、想定よりも高価でも、合成段階数を省略可能な原料を購入するなどして、研究を加速させるために使用する予定である。
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