2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of two-dimensional ionomics and its application to plant nutrition
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20K05762
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平舘 俊太郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (60354099)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオノミクス / 植物 / 土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は土壌に多く硫黄を含む硫気荒原に生息する酸性土壌耐性が極強のカヤツリグサ科植物の根における元素動態に及ぼす硫黄の影響について調査した。このカヤツリグサ科植物は硫黄が十分存在する条件でのみアルミニウム耐性が極強であり、硫黄が地上部へのアルミニウム輸送の制御に関わることが示唆されている。調査ではアルミニウムを含む培養液で栽培した植物体のインタクト根から脱離液で溶出されるアポプラスト画分、凍結融解により膜を破壊した後に脱離液で溶出されるシンプラスト画分、および残渣画分(脱離液で溶出されない画分)に分け、それぞれの画分における元素の一斉分析を行った。その結果、この植物のアルミニウム耐性において重要な役割を持つことが予想される硫黄は、アポプラストでは硫黄処理の影響は全く受けなかった一方、低硫黄処理のシンプラストでは高硫黄処理の1/100程度の濃度しか硫黄が存在しなかった。このことはアルミニウム耐性における硫黄の役割がシンプラストにおけるものであることを強く示唆する。また硫黄と同様にシンプラストでのみ高硫黄処理で濃度が上昇した元素にはリンと鉄があり、これらの元素が硫黄と関係してアルミニウム耐性を強化している可能性が予想された。アルミニウム処理時に根に存在する硫黄の形態は95%以上が無機硫酸イオンであることが別に行った実験で明らかになったため、根シンプラストでのアルミニウムの形態として硫酸イオンとの複合体を予想した。しかしそれに反して、アルミニウムの形態は有機酸との結合形態が主体であった。このことから硫酸イオンはアルミニウムの直接的な無毒化以外の役割を持つことが示唆された。 補助事業期間中の研究により、形態を考慮した無機元素の一斉分析の新しい方法を提案できた。この方法を使うことで、全量分析ではわからなかった植物や土壌の元素の変動を検出できる可能性が示された。
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