2020 Fiscal Year Research-status Report
Large-scale X-ray fluorescence analysis on plant specimens and construction of information base on element accumulation of plants
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20K05765
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
水野 隆文 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50346003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
橋本 篤 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40242937)
村井 良徳 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (30581847)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛍光X線分析計 / 元素濃度測定 / 植物標本の測定 / 多量元素 / 微量元素 / 有害元素 / 集積性植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年間の研究機関の初年に当たる2020年度,前半は自作の標本を用いた測定方法の確立と測定のバラツキをもたらす要因についての検討,および従来の元素分析方法(AAS, ICP)とのデータの相違について検証を行った。植物標本の含水率は平均6.96%ととなり,標本の作製からの期間(および保存方法)が含水率に関与する結果が得られた。湿式分解した標本をICPで測定し,XRFデータと比較した結果,各元素ともXRFのデータが低く出る傾向が認められた。また葉の表と裏,葉の中央と縁でそれぞれ測定した場合,元素によって有意な濃度差が認められた。以上の結果を踏まえ,XRFによる標本の元素測定については,従来の方法とは必ずしも同様の測定濃度とならないことを認識し,その上でXRFによるデータ収集方法について以下のようなルールを定めた。①基本的に葉の表面側(一般的な標本の表側)で,なるべく葉脈部分を外した葉の中央部分で測定する。②一つの標本あたり,別々の葉で3回測定する。③各元素3回の測定の平均値を算出し,測定値が平均値の50%以上200%以下であることを条件に利用可能データとする。④改ざん防止策を取る(測定後とのpdf化,標本の写真撮影)。ただし個別の生データについては利用可能とする。以上のルールを元に,年度後半は各種機関から借用した標本の測定を進めた。 三重大学で自作した標本274標本に,石灰岩土壌である三重県いなべ市の藤原岳,滋賀県米原市の伊吹山の標本をそれぞれ地元の資料館より借用した標本を加えた計638サンプルのXRF測定を2021年2月までに行った。その結果,従来常識と考えられていた石灰岩土壌における植物の鉄不足は確認されず,むしろ鉄や亜鉛が一般植物の2倍以上高いと言う結果が認められた。その他コシアブラの高マンガン集積性が確認されたほか,中部地方の植物は硫黄が少ないことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
安定したデータを収集するための測定ルールを策定するため,測定のバラツキを発生させる要因の検証をおこなった。葉の表と裏から測定した場合,K, P, S, Znで10%以上の濃度差が発生していた。また葉の中央と縁で測定したデータを比較した結果でも,Si, K, Fe, Moで半数以上の標本に有意差が認められた。標本の水分含量は平均で7%程度であり,。これらの結果を踏まえ,測定は葉の表面側(基本的に植物標本ははの表が上になっている)から,葉の中心部付近の,葉脈をなるべく避けた部分で測定し,また標本について記録する事項には,採取場所や作成者の情報の他,作成時期についても記述し,参照できるよう記録方法を策定した。 年度後半では実際に研究機関などが保存する標本のローンを受け,測定を開始した。藤原岳自然科学館および伊吹山文化資料館が所有する石灰岩土壌の植物標本計310サンプル(82標本および228標本), 非石灰岩土壌植物として,三重大学および三重大学演習林などの328標本,合計638サンプルのXRF測定を行った(2020年2月現在)。石灰岩土壌,非石灰岩土壌それぞれの土壌で90%以上測定できた元素は7種類(K, Ca, Fe, Zn, Mn, Mo, Si), 80%以上測定できた元素はSおよびPであった。Welchのt検定において有意水準1%で平均値に差がある元素はP, S, Fe, Zn, Mn, Moであり(K, Ca, Siは0.01<P<0.05),このうちFe, Znについては石灰岩土壌の植物が非石灰岩土壌の植物の2倍以上高く,逆にMnは非石灰岩土壌の1/3と低かった。このことより,従来植物栄養学上の常識とされた「石灰岩土壌ではpHが高く,鉄や亜鉛などの微量元素が吸収しづらく,欠乏症となる」という概念に一石を投じる結果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(科研費研究初年度)に確立したXRFの測定ルールを基準として,2021年度は測定数およびデータの積み重ねと,小規模から中規模のデータベースを構築と植物栄養学的知見のデータ抽出を図る。現状では一日あたりの測定数が15-20標本程度であるが,年間2,000-3,000標本の測定データの積み増しを図り,研究が終了する2023年度までに大規模データと言える10,000標本の測定を目指す。XRFによる各元素の測定には検出限界から来る下限値があるため,正規分布を描くデータベースは構築できないが,高集積性植物については上位5%に含まれる植物種について,低集積性植物については検出限界に達しなかった標本も含めて植物種の解析を進める。 2021年4月現在まで標本の測定に協力可能な機関は中部圏(三重大学関係,伊吹山,藤原岳関係),北陸(福井総合植物園),四国(高知県立牧野植物園),中国(岡山大学資源植物科学研究所)であり,2021年度までにこのエリアにおける植物の元素データベース構築を目指す。一方,本研究課題主要テーマである「火山灰土壌と非火山灰土壌における植物の硫黄集積量の相違」について解析を行うためには,北海道,東北,九州などの火山灰土が堆積したエリアでの植物収集や標本収集が不可欠である。そのため(コロナ禍でも可能であれば),自身での標本作製のため神奈川の箱根エリア,北海道(十勝岳近辺)などで植物採取と標本作製を予定しているほか,火山の近くにある植物園などに標本のローンを依頼する。その他,ウコギ科植物の金属集積性に関する情報収集(特にコシアブラとタカノツメ)を進めるほか,2020年度に中部地方で行った石灰岩植物の解析について,四国の標本を新たに解析することで,得られた結果の普遍性について検証する。
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Causes of Carryover |
当初出席を予定していた国際学会(第10回国際蛇紋岩植生学会、エカテリナブルク,ロシア)がコロナの影響で学会自体が2022年6月に延期となった。この予算を2022年度に利用するため,該当予算を繰り越した。
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Research Products
(5 results)