2020 Fiscal Year Research-status Report
育種・染色体操作を用いたサケ科魚類の魚卵アレルゲン性低減化の試み
Project/Area Number |
20K05903
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 裕 北海道大学, 水産科学研究院, 技術専門職員 (00374629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 友季穂 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部 網走水産試験場, 主査 (00825177)
藤本 貴史 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10400003)
平松 尚志 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10443920)
石田 晃彦 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20312382)
渡慶次 学 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60311437)
佐伯 宏樹 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (90250505)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 魚卵アレルゲン / 魚卵アレルゲン検知・定量系 / 不妊魚 / 異種交雑魚 / 三倍体 / ペーパー分析デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では大別して下記の3項目から成っている。以下に各項目の実績を述べる。 1.不妊魚の作出:ニジマスの卵と凍結保存したブラウントラウトあるいはサクラマスの精子を受精し、受精後10分に29℃の水温で10分間の高水温処理を行うことで雑種三倍体(ニジマス×ブラウントラウト、ニジマス×サクラマス)を作出した。これらの処理群からは孵化個体が得られ、現在も継続して飼育している(藤本)。 2.魚卵アレルゲン検知系の構築:本研究で用いる検知系は、目的物を認識する抗体を用いた免疫学的手法である。それゆえ、作出する雑種三倍体の母体であるニジマスおよびサクラマスについて、各々の卵からアレルゲンであるβ’-component(以下、BC)を精製した。その後、精製物を家兎に免疫することで、各BCに対する抗体の作製を実施した。ニジマスBCに対する抗体は完成したが、サクラマスBCについては作成の途上である(佐伯、平松)。 また、既存法よりも迅速かつ簡便にBCを検知・定量可能なペーパー分析デバイス(以下、PAD)構築の基礎的知見を得るため、先行研究で得たシロザケBCを用いた検証を行った。PADは、ろ紙を基材とする小型、軽量、薄型の自動流れ分析デバイスである。PADでの流路は紙繊維であり、そこに導入した検体は、紙繊維による毛管現象によって流れながら、流路の途中に塗布された抗体、酵素、基質などと反応し、流路末端で分析反応が完了する。今年度は、抗体機能の低下を抑えた流路への抗体固定化法を確立した(渡慶次)。つづいて、その他の分析条件を検討し、従来法(ELISA法)と同等の検出感度を有しながら、分析時間を1日半から1時間に短縮できる分析系の構築に成功した(石田)。 3.不妊化魚の魚卵アレルゲン性の調査:既存の不妊化三倍体ニジマスを複数サンプリングし、各内臓組織に含まれる魚卵アレルゲンを測定中である(笹岡、清水)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績の概要でも述べたように、当研究課題は1:不妊魚の作出、2:魚卵アレルゲン検知法の構築、3:不妊魚の魚卵アレルゲン性の調査の3種項目からなっている。 項目1に関しては予定通り、異種交雑魚(ニジマス×サクラマス)の孵化に成功しており、次年度以降に成熟個体に相当するサイズの魚を得る目処をつけることができた。しかし、項目2と3の活動に関しては、遅延が生じている。具体的には、項目2において当初の予定であるニジマスBC抗体を用いた検知系の構築に至る事が出来なかった。また項目3については、ニジマスの不妊化三倍体のサンプリングを行ったが、それらの含有魚卵アレルゲンを定量することはできなかった。 この遅延は、COVID-19の流行に伴って大学での活動が大きく制限されたことに起因する。特に当大学では、6月までは実験動物の世話など一部の例外を除いて研究室の活動、特に屋内での作業が大きく制限された。本課題は、屋内での実験が主であるため、研究進捗に遅延が生じるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
項目1.不妊化魚類の作出:当初の予定通り、作出した雑種三倍体の成育とサンプリングを進めるとともに、サクラマス×イワナの雑種三倍体の作出を目指す。 項目2.魚卵アレルゲン検知系の構築:引き続きサクラマスBC抗体の作成を進める。そして先に完成したニジマスBC抗体と併せて、ニジマス卵アレルゲンおよびサクラマス卵アレルゲン検知系の構築を進める。 項目3.不妊化魚類の魚卵アレルゲン性の調査:前半は今年度にサンプリングした既存不妊化魚類の含有魚卵アレルゲンの調査を進める。また後半では、項目2で構築した検知系を用いて、今年度に作出した雑種三倍体の含有魚卵アレルゲンの含有アレルゲンの調査を進める。 今後、COVID-19に関連して、研究活動が制限された場合は、項目1および2を優先し、不妊化魚類および魚卵アレルゲン検知系の作出・構築のみを目指すものとする。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い、6月頃まで当大学が閉鎖状態となった。さらに閉鎖解除後も、感染防止のための活動人数や活動時間の制限が行なわれたため、当初予定していた研究を行う事が出来ず、次年度使用額が生じた。
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