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2021 Fiscal Year Research-status Report

Effects of salt consumption by the scent of food and spice

Research Project

Project/Area Number 20K05945
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

長田 和実  日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00382490)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywords匂いによる適塩作用 / 揮発性成分 / 嗅覚 / 食品機能
Outline of Annual Research Achievements

1年目に適塩(塩水摂取抑制)作用が確認された匂い成分を用いて以下の研究を行った.C57BL/6j(B6)雌マウスに対するオレガノおよびその活性成分であるcarvacrolの提示量を変化させ,適塩作用の濃度依存性を二瓶選択法を用いて検討した.その結果,carvacrol気相中濃度を3.6ppmから0.5ppmまで段階的に低下させると,1.8ppmまでは適塩作用が誘起されたが,より低濃度では有意差がなかった.carvacrolの適塩効果は濃度依存的であった.
オレガノ匂い処理1時間後のマウスの脳を採取し,免疫組織化学的解析を行ったところ,NaCl嗜好調節に関係する多くの中枢で変化が観察され,中でも分界条床核外側・内側腹側部などの領域でFos陽性細胞密度が有意に増加した.オレガノの匂い成分は嗅覚刺激により,NaCl 嗜好を調節する中枢領域に作用して適塩効果を発揮する可能性が示唆された.
B6マウスにベーコンの燻煙臭を暴露させ,匂い暴露後1~10日のスパンでマウスより視床下部を採取して定量PCRを行った結果,オキシトシン受容体のmRNAの発現量は暴露24時間後に有意に低下し,その後経時的に上昇に転じた.ベーコン燻煙臭はこれらの遺伝子発現を調節し,適塩効果の誘起に関与している可能性が示唆された.さらに雄のB6マウスを用い,同様にオレガノ,carvacrol,再仕込み醤油の適塩作用を検討した結果,オレガノの匂いは雄マウスに対してメス同様の適塩効果を発揮した.一方,carvacrol単独ではオスに対する作用はメスよりも有意に低く,雄に対してはcarvacrol以外のオレガノ中匂い物質が関与している可能性が示唆された.再仕込み醤油ではより明確な雌雄差がみられた.匂い成分による適塩効果の雌雄差が見られたのは予想外であり雌雄差を誘起するにおい成分の同定や作用メカニズムの解明は今後の課題である.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2021年度の研究を通して1)適塩(塩水摂取抑制)作用が確認された匂い成分のうち,carvacrolの適塩作用は濃度依存的に起こることを動物行動学的手法を用いて確認した.2)マウスはオレガノの匂いを嗅いだだけで食塩摂取と関連のある複数の中枢領域でFos 陽性細胞密度に変化が現れ,中でも分界条床核腹側部などで顕著であることを免疫組織化学的手法を用いて示した.3)適塩作用との関連が知られているオキシトシン受容体などのmRNA 発現量は匂い暴露により変化した.4)匂いによる適塩作用に雌雄差の存在という新たな課題を発見した.などの成果を上げることができ,おおむね順調に推移している.
定量PCR の測定系は日常的に稼働しておりアンジオテンシンⅡやオキシトシンーオキシトシン受容体系などの食塩摂取に直接関与する因子のmRNAの発現量に関する情報は順調に蓄積されている.ナトリウムを含む食行動に関与するオレキシン系やストレスとの関連からCRHなどより広範なペプチドその受容体にターゲットを広げ解析中である.さらに心房性ナトリウム利尿ペプチドの食塩嗜好性の上昇作用がつい最近報告され,受容体を含め測定する必要が生じている.食塩摂取調節作用に関与する脳領域についても一部その関与が確認されており,この測定系を用いた結果においても格段の進歩が実証されつつある.
末梢におけるアルドステロンや心房性ナトリウム利尿ペプチド,アンジオテンシンⅡなどはELISAで定量する必要があるが,2021年度 microplate washer の老朽化により測定ができない状況にあったため,2022度は積極的に取り組む.

Strategy for Future Research Activity

2021年度までの研究でオレガノをはじめとする食品の匂い成分がもたらす適塩効果の様々な性質が明らかになり,そのメカニズム解析の体制が整い,一部では成果が得られ始めている.
2022年度は定量PCRによる脳内のナトリウム調節系に対するにおい成分の関与について明確にしてゆきたい.すなわち,アンジオテンシンⅡ受容体,オキシトシンおよびその受容体,心房性ナトリウム利尿ペプチド及びその受容体などのmRNA量を定量PCRの手法で明らかにしたい.また アルドステロンなどのステロイドホルモンの定量をElisa で行う予定である.
さらに免疫組織化学的手法を用い,体液の浸透圧の中心的な監視装置である感覚性脳室周囲器官(sCVOs) 脳弓下器官 (SFO), SFOにある細胞集団から連絡を受ける特定の脳領域である 終盤血管器官(OVLT), 正中視索前野 (MnPO), 室傍核 (PVN), 視索上核 (SON),(Matsuda et al.2017 Nat Neurosci 20, 2, 230) さらに塩味嗜好と嗅覚刺激のいずれにも深い関連のある扁桃体内側核(MeA), 扁桃体中心核 (CeA), 分界条床核,など体液中の電解質調節に関与する脳領域と塩味の嗜好発現に関する領域に着目し,塩味摂取と匂い提示によりFos 発現が変化する部位を明らかにする.雌雄差の観点からはオキシトシン受容体の性差が確認されたMnPO(Sharma et al. 2019 Plos One 14, 7)に注目して研究を進める予定である.さらにAGRP神経により嗅覚経路と行動的誘因に関与することが明らかになった視床室傍核(PVA)や視床下部弓状核(Horio et al.2021 Nature 592, 8, 262) にも着目し,食品の匂いによる適塩作用の発生メカニズムの全貌に迫りたい.

Causes of Carryover

次年度使用が生じた理由は以下のとおりである.2年目はELISAで定量の実施に必要なmicroplate washer が経年劣化のため使用不能となり,実施できなかった.そのような状況下においても,実験消耗品を活用しつつ研究を進めた.microplate washerという本実験遂行に必要不可欠な機器が失われたため,科研費予算を2年分組み合わせ,2022年度に購入する予定である.

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Changes in gaseous concentration of alkylpyrazine analogs affect mouse avoidance behavior2021

    • Author(s)
      Osada Kazumi、Miyazono Sadaharu、Ohata Motoko、Noguchi Tomohiro、Kashiwayanagi Makoto
    • Journal Title

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      Volume: 85 Pages: 2343~2351

    • DOI

      10.1093/bbb/zbab178

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Journal Article] Application of integrative physiological approach to evaluate human physiological responses to the inhalation of essential oils of Japanese citrus fruits iyokan (<i>Citrus iyo</i>) and yuzu (<i>Citrus junos</i>)2021

    • Author(s)
      Ohata Motoko、Zhou Lanxi、Ando Shiori、Kaneko Shu、Osada Kazumi、Yada Yukihiro
    • Journal Title

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      Volume: 86 Pages: 109~116

    • DOI

      10.1093/bbb/zbab193

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] オレガノの匂いによるマウスの食塩摂取量調節に関する研究2022

    • Author(s)
      秋山菜々子、細野朗、大畑素子、長田和実
    • Organizer
      日本農芸化学会2022年度京都大会
  • [Presentation] コーヒーの生理活性成分が嗅覚認知機能に及ぼす影響について2022

    • Author(s)
      鯨井晋麗、坂本彩乃、石塚里瑚、河上知佳、山田萌夏、細野朗、津田真人、大畑素子、長田和実
    • Organizer
      日本農芸化学会2022年度京都大会
  • [Presentation] 食品中匂い成分による食塩摂取量の調節に関する研究2021

    • Author(s)
      秋山菜々子、細野朗、大畑素子、長田和実
    • Organizer
      第55回日本味と匂い学会(福岡)

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Published: 2022-12-28  

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