2021 Fiscal Year Research-status Report
自家和合性を獲得した四倍体ロコトトウガラシの自家受粉における着果不良の要因解明
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20K06017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮島 郁夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 教授 (20182024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水ノ江 雄輝 九州大学, 農学研究院, 助教 (50759206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 四倍体 / コルヒチン処理 / ロコトトウガラシ / 自家和合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立研究開発法人農業生物資源研究所ジーンバンクから分譲を受け,コルヒチン処理により獲得した四倍体ロコトトウガラシを用いて,自家受粉での着果率を調査するとともに,得られた果実の諸形質(果実重,果実幅,果皮厚,種子重,1果実当たりの種子数)を調査した. 調査した3系統14個体のうち,1個体を除く他のすべての個体で自家受粉で着果が認められ,もっとも着果率が高い個体では交配花数42花のうち27果が得られた(着果率64.3%).この結果から4倍体ロコトトウガラシの栽培化に向けての実用性が示された. つぎに,果実形質の調査の結果,四倍体ロコトトウガラシの果皮は二倍体と比較して有意に厚くなることが明らかとなった.トウガラシ類の可食部(果皮)は外果皮,中果皮,内果皮から形成されているが,果皮の横断切片を顕微鏡で観察したところ,四倍体ロコトトウガラシでは内果皮が二倍体よりも有意に厚くなっていた.さらに,二倍体ロコトトウガラシの果実では中果皮から外果皮にかけて細胞が小さくなっていたが,四倍体では外果皮においても中果皮と同程度の大きさの細胞から形成されており,これら内果皮と外果皮細胞の肥大化が果皮厚の増大に関与したと考えられた.1果実あたりの種子数は四倍体ロコトトウガラシのほうが二倍体よりも少なかったが,四倍体では二倍体よりも種子が大きく種子重も重かった.さらに,果実重,果実長,果実幅は二倍体ロコトトウガラシのほうが四倍体よりも有意に大きな値を示したが,今回の栽培はすべて鉢植えで行っていることから,二倍体に比べて着果数が多かった四倍体ロコトトウガラシにおいて,果実間の養分の競合により果実が小さくなったと考えられた.このことから今後は摘果によって果実数を制限して,四倍体と二倍体の果実形質を比較すべきと思われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため大学への入構が制限されるなど,本研究課題の遂行に大きな支障があったが,昨年度は大きな障害もなく研究課題の遂行が可能であった.ただ,研究開始当初の目的であった四倍体ロコトトウガラシの自家受粉における着果不良の要因解明よりも,昨年度は自家受粉で着果する四倍体ロコトトウガラシの優良個体の選抜を主な目的とし,さらに,得られた果実の形質を調査してロコトトウガラシの栽培化に向けての実用性を確認する試験を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度に引き続きこれまで得られている自家受粉で着果する四倍体ロコトトウガラシの優良個体の選抜を行う.また,これまでのところ,四倍体ロコトの自家受粉での着果率は最も高い個体でも64.3%であり,それよりも高い着果率を示す個体は見出されていない.そこで,この原因を明らかにするため,人工交配後の柱頭上での花粉発芽および柱頭内での花粉管伸長を観察する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,研究成果を発表するための学会が開催されず,それにより旅費等の支出がほとんどなかったため若干の繰越金(20,341円)が発生した.しかしながら,次年度(令和4年度)には対面での学会が開催されることが予想されるため,繰越金を含めた令和4年度の助成金は予定通り執行される見込みである.
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