2023 Fiscal Year Annual Research Report
自家和合性を獲得した四倍体ロコトトウガラシの自家受粉における着果不良の要因解明
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20K06017
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮島 郁夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 学術特定研究者 (20182024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水ノ江 雄輝 九州大学, 農学研究院, 助教 (50759206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 四倍体 / ロコトトウガラシ / 花粉発芽 / 高温障害 / 自家和合性 / 自家不和合性 / コルヒチン処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
南米アンデス地方原産のロコトトウガラシ(rocoto pepper, Capsicum pubescens,以下ロコト)は紫色の花、茎葉には柔毛が密生するなど他のトウガラシ類とは大きく異なる特徴をもっている。完熟したロコト果実の辛味は強いが、果皮が厚く水分が多く含まれるため、サラダのトッピングやドレッシングとしての利用が期待できる新規な辛味トウガラシである。しかし、ロコトは自家不和合性を示すため、その利用には自家不和合性の打破が不可欠であった。研究代表者らは二倍体のロコトの種子をコルヒチン処理することによって四倍体の獲得に成功し、これらが自家和合性を示すことを確認した。しかしながら、四倍体ロコトの自家受粉での着果率は他家受粉に比べて有意に低いことから、本研究は四倍体ロコトの自家受粉にみられる着果不良の要因解明とその打破を目的とした。 タカノツメなどのC. annuumでは、開花前の花芽が高温に遭遇することで花粉の発達が阻害され結実率が低下することが知られている。そこで、ロコトの二倍体を材料として、20、25、30℃の恒温条件下で栽培したところ、20℃条件下に比べて25および30℃条件下では花芽の発育停止が観察されるとともに、高温条件下ほど花粉発芽率の低下が認められた。 上記の試験と並行して、本年度は福岡県内の7か所の試験地において四倍体ロコトの露地栽培試験を実施した。苗の準備が遅れたため植付時期が5月初旬となり、盛夏の高温期と着果時期が重なった。その結果、栽培試験を実施したほとんどの試験地で果実を得ることができなかった。ただ、標高が高く比較的冷涼な試験地では9月以降に多くの着果が見られた。先の試験の結果から、ロコトは高温下では花芽の発育停止や花粉の発芽不良が起こることが明らかとなっており、四倍体ロコトにみられる着果不良の主な原因は栽培環境(高温)である可能性が示唆された。
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