2020 Fiscal Year Research-status Report
コンブ微小世代のシードバンクとしての能力と実海域における生残性の把握
Project/Area Number |
20K06176
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水田 浩之 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (00250499)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | コンブ / 抵抗性 / 配偶体 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンブ類は、巨視的(胞子体)世代と微視的(配偶体)世代との間で世代交代を行い、両世代の量や質は次世代の生物量を大きく左右する。特に微視的世代は、そのサイズの小ささから実海域における生存性やそれを支える生理・生態学的機構などに不明な点も多い。そこで、マコンブを対象にその配偶体世代がシードバンクとして機能するための生存戦略を調べるため、胞子体世代との類似点や相違点を見出すことから始めた。 現在までに、ストレスを受けた配偶体細胞が活性酸素を発生し、過敏感細胞死などの抵抗性反応を示すことや、多細胞の配偶体の方が単細胞のそれに比べ生存性が高まることが示唆されている。また、マコンブ胞子体において防御や抵抗性に密接に関わるポリフェノールやケイ素が、配偶体においても同程度含有していることが分かり、それらの相互関係解明と微小世代の生存性解明に向けた培養実験を進めている。 さらに、マコンブ配偶体の生物量を推定する技術の開発を目指し、マコンブに特異性を示すプライマーを用い、その特異性と検出条件の検討を行っている。現在までに、PCR・電気泳動で得られた増幅バンドの強度とマコンブ配偶体の生物量との間に有意な相関関係が確認されている。また、広く分布する褐藻の1つである褐藻シオミドロとの存在下でも、マコンブの検出に影響を及ぼさないことが示唆されている。今後は、新たなマーカーを加え、推定法の種特異性と検出感度の向上を目指していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎的なデータの収集・蓄積に必要以上の時間を要したため、その結果として上記の区分となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、沿岸域の主要な藻場構成種であるコンブ類(主としてマコンブ)を対象に、その微視的世代(配偶体)の生存機構の解明に向けて、引き続きそのストレス応答や生存能力を明らかにしていく。配偶体が他の藻類の下草等として生存・越年する状況を想定し、低温・暗条件下で長期間培養した配偶体において、生残個体数を計測すると共に、クロロフィル蛍光や貯蔵物質(マンニトールやラミナラン等)含有量等を測定し、暗条件下においてどのように生存しているか調べる。同時に、長期間暗条件で培養していた配偶体を光照射下で培養し、その後の成長・成熟の有無や程度を把握する。得られた知見をもとに、下草としての生存の仕組みを考察する。 また、巨視的世代の成熟や枯死に伴い放出される化学物質(ポリフェノールなど)の微視的世代の成長、生残や微生物に及ぼす影響を観察し、配偶体の生存に対する巨視的世代の関与を調べる。 さらに、実海域に適用可能なコンブ配偶体の生物量を推定する技術の開発を目指し、新たなマーカーを探索しつつ、プライマーの増幅特異性と検出条件を調べ、その感度の向上を図っていく予定である。加えて、生息域が重複する多様な海藻種と混合した場合の検出可能性を調べ、その特異性と有用性を確認する。
|