2021 Fiscal Year Research-status Report
コンブ微小世代のシードバンクとしての能力と実海域における生残性の把握
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20K06176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水田 浩之 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (00250499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンブ / 配偶体 / 生残性 / ケイ素 / 防御 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンブ胞子体(巨視的世代)は、ストレスを受けると活性酸素を生産し様々な防御機構を誘導することが知られている。その一つとして、胞子体にはオキシダティブバーストによって誘導されるケイ素の細胞外取り込み機構が存在し、この機構が微小世代である配偶体にも備わっていることが示唆された。ケイ素の細胞外取り込み機構は、過酸化水素とハロペルオキシダーゼの存在下でポリフェノールとケイ素が架橋形成することで細胞壁の強化を図っているものと考えられ、配偶体のストレス防御機構の一端が明らかになった。 また、配偶体が他の藻類の下草等として生存・越年する状況を想定し、配偶体を5℃、遮光下で、培地の交換をせずに1~16カ月保存培養し、生残率を測定した。その後保存配偶体を10℃、白色光下(5-10 μmol photons m-2 s-1, 12hr明暗周期)で培養し、成長・成熟過程を観察した。さらに配偶体のクロロフィル蛍光パラメーター(Fv/Fm、Y(Ⅱ)、rETR、NPQ)を、パルス変調クロロフィル蛍光測定装置を用いて測定した。その結果、1‐3カ月間保存した配偶体は保存前と同様の細胞観を呈し、80%以上の生残率と一定のFv/FmとNPQ値を維持し、正常に成長・成熟する能力を有することが明らかになった。6カ月および9カ月間保存した配偶体の平均生残率はそれぞれ68.4%、40.0%に低下し、9カ月の保存配偶体のFv/Fmは保存前の約70%の値に、NPQは約50%の値に低下した。Fv/FmとNPQはマコンブ配偶体の生残率と有意な相関性が認められたことから、長期保存したマコンブ種苗等の生残性を評価する上でFv/FmとNPQが有効な指標となることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目は概ね順調に推移したが、初年度の遅れを完全に取り戻すまでには至らず、上記の区分となった。
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Strategy for Future Research Activity |
マコンブ配偶体(微視的世代)の生残性を左右するストレス抵抗・防御機構の解明を更に進めるため、胞子体(巨視的世代)の成熟に伴い放出される化学物質の微視的世代の生残、成長に及ぼす影響を調べ、微小世代に対する胞子体の関与を調べる。また、配偶体の高水温に対する耐性と応答機構の解明に向けた培養実験を行い、その潜在的能力を把握する。これにより、昨年度実施した低温・遮光条件下での生残性に加え、高温での生存戦略の解明につながる。 また、DNAマーカーを用いたマコンブ微小世代の生物量推定法を評価するため、実海域に設置した人工基質に付着した生物群を用いて、開発してきた微小世代の生物量推定法と培養法による生物量推定法の合致性を調べ、実海域への適用可能性を評価する。同時に、その特異性と有用性を確認する。その上で、さらなる問題点と改良点を明らかにし、技術改良を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)