2022 Fiscal Year Annual Research Report
コンブ微小世代のシードバンクとしての能力と実海域における生残性の把握
Project/Area Number |
20K06176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水田 浩之 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (00250499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コンブ / 配偶体 / 生残性 / 防御 / ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
マコンブ配偶体(微小世代)は同一培地中で低温連続暗条件のもと3カ月間生存できることを確認した。4カ月以降も同条件下で培養を続けると、クロロフィル蛍光パラメーターのFv/FmやNPQが低下すると共に活性酸素が生じ、生存率も徐々に低下した。また、低光量下での配偶体はより長い期間高い生残率を維持することができ、光の照射が配偶体の生残性に不可欠であることを示唆した。このことから、シードバンクとしてのマコンブ配偶体の生残性は、光量によって大きく左右されることが明らかになった。一方で、高光量で配偶体を培養すると、速やかに成熟し、受精を経て胞子体(巨視的世代)へと成長し、その後限られた栄養環境下では、栄養制限を受けて脱色死滅する傾向を示すこと分かった。 次いで、成熟した胞子体の配偶体への関与について調べた。その結果、胞子体が酸化ストレスを受けると、活性酸素の発生に伴いケイ酸態ケイ素が取り込まれ、取り込んだケイ素は細胞外においてヨードペルオキシダーゼの作用を受けてポリフェノールと架橋構造を形成し、様々な環境ストレスに対する防御機能を果たすことが示唆された。オキシダティブバーストが見られる子嚢斑には、未成熟部位に比べ高いケイ素を含有するだけでなく、難消化成分であるポリフェノールも高含有していることから、上述した防御機構が子嚢斑において顕著にかつ積極的に働いていることが予想された。このような子嚢斑組織の一部はエゾバフンウニやキタムラサキウニの摂食によっても消化されず、糞中に子嚢斑組織片の残存する様子が観察された。さらに、子嚢斑を摂食したウニの消化管内の糞や放出した糞を培養すると、コンブ配偶体や芽胞体が多数出現したことから、コンブ巨視的世代の微視的世代への貢献の一端が明らかになった。この現象は、ウニによる子嚢斑の摂餌がコンブの分布域拡大や多様性維持に貢献している可能性を示すものである
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Research Products
(1 results)