2020 Fiscal Year Research-status Report
海洋性魚類の食物連鎖解明に資するエイコセン酸異性体組成のデータベース構築
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20K06199
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 靖浩 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (30261340)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エイコセン酸 / ガスクロマトグラフィー / 薄層クロマトグラフィー / 脂肪酸 / 水産脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
海産魚の食性解明に資するエイコセン酸異性体組成のデータベース構築を目的として、今年度はエイコセン酸位置異性体組成決定のための分析条件を確立した。 前処理として必要な銀イオン薄層クロマトグラフィーによる魚油脂肪酸メチルエステルからのモノ不飽和脂肪酸の分離濃縮条件を検討した。その結果、プレート:10%硝酸銀含浸シリカゲル60(濃縮ゾーン付き)、展開溶媒:ヘキサン/アセトン(98:2)、検出:360 nm UV、回収:ヘキサン/ジエチルエーテル(50:50)によってエイコセン酸を含む全てのモノ不飽和脂肪酸の単離が可能となった。プレート1枚当たり5サンプルの処理が可能であり、1サンプルにつきわずか50μgの魚油脂肪酸メチルエステルからコンタミネーションのないモノ不飽和脂肪酸を単離できた。 エイコセン酸異性体のガスクロマトグラフィーに新たにGC-4000 PLUS A型ガスクロマトグラフを導入し,分析の微量化およびカラム温度の条件を検討した。当該機種の特性である高圧スプリットレス注入モードを利用した結果,上記の50μgの魚油脂肪酸メチルエステルから単離した微量のモノ不飽和脂肪酸を分析することが可能となった。同時に,流量コントロールモードによる一定流量下での昇温条件を検討した結果、60 mまたは100 mの超高極性カラムでの分析で1時間以内にエイコセン酸の全6種、さらにドコセン酸全5種の異性体の分離定量が可能となった。 以上の条件確立によって、微量かつ多検体のエイコセン酸異性体分析が実現できることとなった。今後、海産魚のサンプルに適用することによって実際のデータ収集に進む計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、データベース構築を目指すものであるため、多検体の分析処理が不可欠である。研究初年度にあたる今年度は、多検体分析のための技術の確立に注力した。その結果、前処理の薄層クロマトグラフィーにおける分離条件およびガスクロマトグラフィーにおける分析条件を見出すことに成功し、分析の効率化、迅速化、規格化、微量化を達成することができた。 当初の計画では、前処理に薄層クロマトグラフィーとともに高速液体クロマトグラフィーを利用する予定であったが、今年度の結果から後者は利用する必要のないことも明らかとなった。このことも、分析の効率化、迅速化に大きく寄与することができた。 以上より、次年度以降に行う実際のサンプルの分析に向けて必要な準備が整えられたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に確立した分析条件を使って、今後は魚類を始めとする海洋生物のエイコセン酸異性体組成の分析に取り組む。分析数は当初の計画通り以下の460検体を予定している。すなわち、動物プランクトン(80)、マサバ(40)、カタクチイワシ(40)、イカ(30)、ハダカイワシ(70)、マグロ筋肉(80)、マグロ肝臓(50)、マグロ卵巣(70)。これらのうち中間捕食者であるマサバとカタクチイワシを優先する。それ以降,低次および高次捕食者を年間 100~150 検体のペースで分析する。
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