2023 Fiscal Year Research-status Report
海洋性魚類の食物連鎖解明に資するエイコセン酸異性体組成のデータベース構築
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20K06199
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安藤 靖浩 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (30261340)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エイコセン酸 / 脂肪酸組成 / 異性体 / カイアシ類 / クロマグロ / キチジ / 海域差 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、エイコセン酸の起源とされるカイアシ類、高次捕食者であるクロマグロ成魚の肝臓・卵巣、底生魚であるキチジとその餌生物におけるエイコセン酸二重結合位置異性体(20:1n-15, n-13, n-11, n-9, n-7, n-5)の組成を決定した。また、表層魚・中層魚、カイアシ類、新種の海洋性細菌について、異性体分析の前段階に相当する全脂肪酸組成の情報を公表した。 カイアシ類は、日本海で採集された種はすべて20:1n-9を最も主要な異性体として含んでいた。北極海のカイアシ類もほとんどの種で同様であったが、北方海域で優占するNeocalanus属のみは20:1n-11を最も多く含んだ。一昨年度にサンマ・サバ(表層魚)、ハダカイワシ(中層魚)で認められた異性体組成の南北間の海域差に、餌生物であるカイアシ類の異性体組成が関与している可能性が初めて示唆された。 クロマグロは、肝臓・卵巣においても筋肉と同様に20:1n-11と20:1n-9が主要異性体であった。全個体の20:1n-11の組成値を海域別にプロットしたところ、太平洋と日本海は50%付近に集中したのに対し、南西諸島海域では20%以下と70%以上の2つのグループに分かれた。南西諸島には食餌履歴が異なる2群のクロマグロが混在することが推察された。 キチジの主要異性体は20:1n-11と20:1n-9で、これらの他に20:1n-13と20:1n-7も約20%までの範囲で含まれた。潜在的餌生物としてクモヒトデ、十脚甲殻類、多毛類、貝類、頭足類とともに異性体組成を主成分分析により可視化したところ、キチジは十脚甲殻類と重複してプロットされた。キチジの主な脂肪酸供給源は主食とされてきたクモヒトデよりも十脚甲殻類またはそれを捕食する魚類・イカである可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題は開始から4年目を終了した。前年度までに表層魚・中層魚のエイコセン酸異性体組成を調べ南北の海域差があることを明らかにしてきた。今年度は本研究の根幹であるカイアシ類の異性体組成を明らかにした。カイアシ類とそれを捕食する表層魚・中層魚との間で類似の海域差が認められたことから、エイコセン酸異性体組成が海洋食物網の解明に有用なことを示すことができた。また、より高次のクロマグロ、表層魚とは異なる餌環境下にある底生魚における活用も示すことができた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当課題は次年度が最終年度である。これまでの調査で空白となっているサンプルを中心に異性体分析を進めデータの増強を図る。すなわち、三陸・常磐東方海域および南西諸島のカイアシ類、採集年の異なる日本海・北極海のカイアシ類、日本海採集の表層魚、三陸・常磐沖のクロマグロの水和卵の分析を実施し、エイコセン酸異性体組成を軸とした捕食・被食関係を体系化する。
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Research Products
(4 results)