2021 Fiscal Year Research-status Report
Effectiveness of business activities by general companies to sustainability of rural society in mountainous or islands area
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20K06258
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
細野 賢治 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (90271428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 泉 広島修道大学, 商学部, 教授 (90289265)
八島 雄士 和歌山大学, 観光学部, 教授 (00320127)
山本 公平 大阪経済大学, 情報社会学部, 教授 (80379859)
大坪 史人 別府大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30803069)
長命 洋佑 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (10635965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Creating Shared Value / CSR / 信頼関係構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、広島県で農業参入を行っているS社とP社の事例を取り上げ、両社の農業ビジネスに対するバリューチェーン分析を通じて、農業参入の持続性に求められる経営戦略を検討した。2社の農村地域との関わり方という点では、担当者が地域に入り込んで関係性を構築するとともに、行政、農協など関係機関との連携を密に持つことで、地域との関係性構築や地域のニーズに対応した取組を実現している。また、社内での意思決定の下で地域との関係性構築を行っているうえ、パッケージ戦略として国内他産地や海外への展開を見据えていたことが確認できた。 さらに、それぞれ米加工機器製造、あるいはレモン加工といった本業で培った技術やノウハウなど、自社の強みを活かした農業ビジネスの展開によって、農村地域の課題解決と長期的な視点でみた原料調達先の確保による自社事業の拡大の両立をめざすことが経営戦略の柱となっていた。これは単なる事業の多角化やCSRといった利益に反映しにくい社会貢献ではなく、社会的課題の解決を通じて本業の長期的利益を実現するというCSV(Creating Shared Value)の考え方に相当するといえる。 例えばS社は、これまで築いてきた地域との関係を活かして地域に寄り添った事業を行ってきた。またP社は、地域外の企業でありながらも担当者の地域に入り込むといった姿勢で業務を行い、これを会社が人的資源管理の方法として組み込んだ。両参入企業事例の取組は、企業活動としての経済的側面ではなく、参入企業と農村地域が抱えている課題に対し、相互に支援を行うことで解決を図り、相互成長するようなパートナーシップとしての関係を構築した結果であるといえる。これらはCSVの観点から構築された経営戦略に基づく取組であり、農業という地域を基盤とした産業部門に農外企業が参入する際、経営の持続性を担保するうえで重要な視点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は2020年度と同様、新型コロナウイルス感染拡大の懸念から、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発令されたことから、移動の制限や対面での調査が制限され、旅費を伴うフィールド調査やミーティングがほとんど不可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載された研究課題は、以下の通りであった。すなわち、①農業外企業が地域農業との親和性を高めるためのマネジメントのあり方、②地域農業との親和性の高い農業外企業が自社のフード・サプライ・チェーンに与える社会経済的効果、③農業外企業と農村社会との関係構築にかかる行政・農業団体のマネジメントのあり方、④地域農業との親和性の高い農業外企業が農村社会に与える社会経済的効果、⑤農業外企業と地域農業および農村社会との望ましい関係についての検討、の4点である。 このうち、①および④について、事例となったS社およびP社においておよそ解明に至ったと思われる。今後は、②および③を検討し、それらを総括し、⑤の検討を行う必要がある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:2021年度は2020年度と同様、新型コロナウイルス感染拡大の懸念から、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発令されたことから、移動の制限や対面での調査が制限され、旅費を伴うフィールド調査やミーティングがほとんど不可能となった。 使用計画:今年度は事例対象地を日本全国に広げ、積極的にフィールド調査や研究ミーティングを行うことで旅費の支出を計画している。
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