2020 Fiscal Year Research-status Report
域外法人による持続可能な農業参入のあり方ー農地所有権取得の自由化を見据えて
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20K06275
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
榎本 弘行 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30453369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹本 太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (10537434)
中島 正裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80436675)
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90282970)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農地法改正 / 一般法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、「農地所有適格法人」及び「一般法人」(農地所有適格法人以外の法人)を対象に、これらが地域外から農業参入した場合に、①地域の伝統・文化、②地域の景観・伝統的農地管理ルール、及び③地域コミュニティといった「地域資源」にどのような影響を及ぼすのかを「実証的」に明らかにすることである。 当初の1年目の計画では、上記目的達成のため、地域に入り聞き取り調査及びそれに基づいたアンケート調査を行うことが計画されていたが、下記聞き取り調査を除きコロナ禍のためにこれらがほぼ行われなかった。そのため文献調査を主に行った。文献調査により明らかになった重要な点は、例えば、本研究を行うにあたっては、法人の農業参入の態様を、概ね4つに分類するのが妥当であるということである。1つ目は、農地の貸借による農業参入、2つ目は、農業生産法人を設立しての農業参入、3つ目は、農業生産法人に出資しての参入、4つ目は、農作業受託による参入である。 この内、3つ目の農業生産法人に出資しての参入を行っているカゴメ(株)の担当者に対し、研究分担者1名が聞き取り調査を行った。愛知県名古屋市に本社を置くカゴメ(株)は、農業所有適格法人である八ヶ岳みらい菜園(長野県諏訪郡富士見町・6ha程)に46%の出資をして農業参入を果たしている。本研究で着目している地域住民や地域資源に関わっては、次のことが分かった。カゴメ(株)は農業参入に際して、1)10回以上の地域・地権者への説明会・意見交換会、2)積極的な情報開示とアンケート、将来像等の提示、3)難色地権者への丁寧な傾聴と粘り強い折衝を行ったことである。しかし、参入後の地域への影響は十分に明らかにできておらず、早急に自治体や地域住民を対象とする調査によってこれを明らかにする必要がある。その他、今後このような事例研究を順次行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、研究が以下の理由により、遅れている。①研究代表者及び研究分担者は全て大学の教員であるが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、皆オンライン授業の準備・実施に大変忙しく、また同時に学務の量も増えたこと、および②本研究は、調査を中心とする実証研究であるところ、この流行の中、都府県をまたぐ調査先に調査を受け入れてもらうのは難しかったことからである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度(本年度)は、本来令和2年度計画で行うことになっていた以下の調査を行う。すなわち、(1)地域外の法人がある地域に参入した場合、その法人は、「地域資源」とどう対峙しているか、(2)またその地域の人びとはその法人と「地域資源」との関係をどう考えているかに関し、聞き取り調査及びアンケート調査を行う。 調査対象地は、当初計画では静岡県内の自治体としていたが、研究分担者との話し合いで、まず本年度は、本大学と様々な研究交流のある長野県諏訪郡富士見町での調査から行うこととし、その後、この調査の結果を手掛かりに、他の研究対象地を模索することとした。 この調査の終了後は、調査結果を踏まえて、持続可能な法人農業参入の在り方を議論し、一定の仮説を示す。そして、その仮説に基づき、全国的なアンケート調査を実施したい。その後、持続可能な法人参入の在り方を示すとともに、農地「所有権取得」自由化の是非についても一定の知見を示す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、調査がほとんどできなかったため。
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