2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K06318
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅野 里美 名古屋大学, 高等研究院, 准教授 (20586010)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リン酸輸送 / リン酸応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、植物が吸収分配するリン酸の個体内での分布に基づく植物の器官ごとのリン酸分子機構の応答の違いを調べる実験である。本研究は、①リントレーサ挙動解析、②リンの化学形態解析、③リン応答マーカー遺伝子発現解析の3点について進めていく。本年度は、本研究の基本データとなる①について器官・組織別のリン酸の経時変化の解析を目指し、サンプルの栽培条件とイメージング系のセットアップを行なった。CMOSセンサーを使った新規イメージング実験系について計画書にあげていた新たなアイディアを検証した。CMOSセンサー(浜松ホトニクス)を購入し、ベータ線の直接検出を検証し、β線の検出を確認した。しかしながら、長期間使用による放射線による基盤へのダメージやCMOSセンサーの吸収スペクトルを考慮し、光ファイバーでCMOSセンサーとシンチレータを組み合わせた検出系を試したところ、従来の放射線検出系よりも検出感度の面で大幅に改善した。空間分解能は、光ファイバーと検出基盤のピクセルに依存するが、根の細胞を認識できる程度まで向上することを確認できている。②については、イノシトールリン酸測定についてのプロトコルを整えるため、研究協力者の研究室を訪問し、測定させて頂くと予定でいたが、コロナの影響から延期となりディスカッションまでで中断している。③については、①のデータに基づいて解析を行う予定である。本研究に用いる遺伝子を含む論文を現在執筆中であり、次年度内の投稿を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画に記載していたCMOSセンサーを使った新たなアイディアでのイメージング実験系について検討を重ね、本研究に導入する機器を選抜することができた。実際のCMOSセンサーでの検出テスト、CMOSセンサーと光ファイバー結合系での検討に時間を要したが、結果として計画当初のアイディアの通り十分な空間分解能(15-20 マイクロメートル)を持つことを確認した。しかしながら、想定した理論値(6マイクロメートル)よりは低かった。さらに予想外の結果として感度を大幅に向上(約100倍程度)することを確認し、これまでに検出限界以下であった現象を検出できる可能性を見出すことができた。次年度の初めに選抜した機器を導入し、具体的なイメージング実験を進めていくことができる状況が整ったため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に検討したシステムを利用して植物に投与したリン酸の時空間的な広がりについて基礎的なデータを収集し、器官・組織内のリン酸含量とリン酸輸送量について取りまとめる。計画には記していないが新たなシステムの技術的な論文もしくはリン酸輸送の数理モデル化と合わせて成果としてまとめることを予定している。イノシトールリン酸の測定およびセンサーの検討については、研究内容が海外研究者と競合することが判明したため、今後は、イノシトールリン酸についてはLC-MSでの測定を中心に行っていく予定である。リン酸の時空間的広がりのモデルが固まった段階で遺伝子発現解析へ移行する予定でいる。
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Causes of Carryover |
本年度の実験計画にてCMOSセンサー検出系を検証した結果、CMOSセンサー単独ではなく、シンチレータと光ファイバーとの組み合わせた検出系が最適であることが判明した。本年度計画していた金額では購入が難しいため、次年度使用額とし、次年度予算と合わせて機器購入をする計画とした。
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