2020 Fiscal Year Research-status Report
旋毛虫分泌タンパク質による宿主筋肉細胞変異の分子生物学的および構造生物学的解析
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20K06390
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
長野 功 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40283296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 洋一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10294670)
鎌足 雄司 岐阜大学, 高等研究院, 助教 (70342772)
呉 志良 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90313874)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 旋毛虫 / 筋肉細胞変異 / 筋肉細胞分化 / Ts43タンパク質 / 遺伝子発現 / タンパク質の立体構造 / RNAインターフェレンス(RNAi)解析 / トランスジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、Ts43が筋肉細胞変異にどのように関与しているかの解明を試みた。Ts43 遺伝子をベクター(pCDNA3.1および核内発現ベクターであるpVP22)へ導入を行った。その後筋芽細胞株(C2C12細胞)に各構築ベクターをトランスフェクションし、安定にトランスフェクトされた細胞の選択を行うためにG418によりセレクションを行った。これを数代繰り返し、安定的にTs43遺伝子を発現するC2C12株を作成した。 旋毛虫感染筋肉細胞における遺伝子動態の解析において発現に大きな変化が認められた各遺伝子、すなわち筋分化調整因子(myogenin, MyoD)、アポトーシス関連遺伝子群(BAX, Apaf-1, Caspase-9, PKB)、および細胞分化・がん関連遺伝子(c-Ski)のTs43導入C2C12細胞における発現動態をリアルタイムPCRにより検討した。その結果、筋分化調節因子、がん関連遺伝子群、アポトーシス関連遺伝子群などに有意な変化が認められた。 細胞が放出するタンパク質やmiRNAを含んだエクソソーム細胞外小胞(EV)は、多くの細胞種(免疫、腫瘍、神経細胞)において、細胞間のコミュニケーションに関与していると考えられている。旋毛虫もそのようなEVを放出しており、Ts43タンパク質もEV中に存在することを質量分析により証明した。旋毛虫から採集したEVをC2C12に摂取し、筋分化調整因子(myogenin, Mef2, Mhy2, Myh3)の発現をqPCRで測定した。EVは細胞分化の初期過程においてmyogeninおよびMef2の発現を促進し、また分化の完成を示すMhy2及びMhy3の発現も促進していた。すなわち、Ts43タンパク質を含む旋毛虫由来のEVはC2C12の分化を促進し、その分化は旋毛虫による筋肉細胞変異に重要な役割を果たすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度はTs43タンパク質のC2C12細胞での遺伝子発現解析はおおむね実施できたが、予定であった転写因子の転写活性に対するTs43の作用についての解析は実施できなかった。 これはTs43タンパク質が含まれるエクソソーム細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EV)に関する実験を主に実施したからである。 また、TS43の構造生物学的解析においては、用いた大腸菌株による組換えタンパク質ではTs43タンパク質の収量が多くないことが新たに分かった。そのために、研究が遅れたが、現在シャペロン導入大腸菌におけるタンパク質発現を試みているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、前年度に実施できなかった研究計画を実施する。すなわち、転写因子AP-1およびNF-κBの転写活性に対するTs43の作用についての解析をルシフェラーゼアッセイにより行う。また、RNAインターフェレンス(RNAi)解析によりTs43の筋肉細胞変異における役割を解明する。また、TS43の構造生物学的解析実験においては、シャペロン導入大腸菌によるTs43の組換えタンパク質を大量に合成・精製し、タンパク質が正しい構造をとっているかどうかを一次元NMR法で確認し、円二色性分光法を用いて二次構造を調べる。その後可能であれば、結晶化によるX線結晶構造解析法を用い三次構造を決定する。
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Causes of Carryover |
構造生物学的解析が当初の計画から遅れたため未使用分が生じた。遅れた理由は、用いた大腸菌株による組換えタンパク質ではタンパク質の収量が多くないことが新たに分かり、それ以後に続く研究が完遂できなかったからである。現在シャペロン導入大腸菌におけるタンパク質発現を試みているところであり、未使用分は、シャペロン関連試薬の購入および今年度にできなった構造生物学的解析実験に用いる試薬類を購入する予定である。
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[Journal Article] Glucose transporter Glut1 controls diffuse invasion phenotype with perineuronal satellitosis in diffuse glioma microenvironment.2020
Author(s)
Miyai M, Kanayama T, Hyodo F, Kinoshita T, Ishihara T, Okada H, Suzuki H, Takashima S, Wu Z, Hatano Y, Egashira Y, Enomoto Y, Nakayama N, Soeda A, Yano H, Hirata A, Niwa M, Sugie S, Mori T, Maekawa Y, Iwama T, Matsuo M, Hara A, Tomita H
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Journal Title
Neurooncol Adv.
Volume: 30
Pages: 06198-06198
DOI
Peer Reviewed
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