2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a novel early-onset diabetes model in house musk shrew (Suncus murinus)
Project/Area Number |
20K06401
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
佐々木 典康 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (20307979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金田 剛治 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (10350175)
神田 秀憲 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (30825609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スンクス / 早期発症糖尿病 / FOXO1 / 膵β細胞脱分化 / モデル動物 / 脂肪細胞由来幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで早期発症糖尿病スンクス(EDS)と、その対照群である正常スンクス(BK)の交配を続け、遺伝子背景をBK系とした新たな糖尿病発症スンクス(EDBK)の作出を目指してきた。しかし、循環交配を重ねた結果、早期発症糖尿病の形質が後退し、糖尿病を有しない個体が増えてきたことから、再度、EDSとBKの交配に戻り糖尿病形質を持った個体の選抜を行っている。EDSにおいては糖尿病形質の強弱に雌雄差は認められていなかったが、BKとの交配により糖尿病の症状が減弱していることから、この早期発症糖尿病の責任遺伝子の1つがミトコンドリアDNA上に存在する可能性が浮上してきた。そこで、EDS由来のミトコンドリアを有する個体群も維持しながら、さらにコロニーの選抜を継続している段階である。 並行してBKスンクスの脂肪組織から抽出したRNAを鋳型とした、5'RACE/3'RACEによる全長FOXO1遺伝子のcDNAクローニングを実施している。スンクスゲノムプロジェクトにより解析されているKAT系スンクスゲノムのデータと部分配列の比較をしたところ、比較を行った領域においてはKAT系とBK系のFOXO1に違いは認められなかった。この領域をBLASTNで相同検索したところ、イベリアモグラ(Talpa occidentalis)のFOXO1配列と約91%の相同性を示した。同じくコガシラネズミイルカ(Phocoena sinus)、ヒトコブラクダ(Camelus dromedarius)、シロイルカ (Delphinapterus leucas)も91%の相同性であった。 この領域のアミノ酸配列を比較したところ、先の動物種以外にホオヒゲコウモリ属のFOXO1と高い相同性が見られた。全般的に多くの動物種と90%以上の相同性を有しており、FOXO1の機能の重要性から鑑みて高度に保存されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、早期発症糖尿病スンクス(EDS)と正常スンクス(BK)の交配群では、糖尿病の形質が減弱しているため、再び第1世代の交配からやり直しているため、糖尿病発症スンクス(EDBK)の作出が大幅に遅れている。 FOXO1の全長クローニングに関しては、まずBKスンクスでのクローニングを進めており、概略の配列は解読が進んでいる状況である。今後は、同様な手法でEDBKスンクスのFOXO1cDNAクローニングを開始する予定である。 EDBKスンクスの形質が減弱していることから、個体での実験が困難となった場合に備えて、脂肪細胞由来幹細胞の採取と、培養脂肪細胞系の作出を開始した。これは、スンクスから取り出した脂肪組織をコラゲナーゼ処理した後、天井培養法で培養し、脱分化脂肪細胞を回収し、この脱分化脂肪細胞(DFAT)を増殖、保存することで培養脂肪細胞系を維持するものである。申請者はこれまでにもウシやネコで脂肪細胞由来幹細胞を取り扱ってきており、同様な手法でスンクスの脂肪細胞由来幹細胞を回収している。この培養脂肪細胞を用いることで、FOXO1の脂肪細胞における機能解析や病態への影響を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に実施予定であった膵島での網羅的遺伝子解析が、EDBKコロニーの作成が遅れているために実施困難となっている。そこで令和4年度は、スンクスでのFOXO1遺伝子の働きを解明することを目的として脂肪細胞由来幹細胞を使った培養細胞系での機能解析を進める予定としている。スンクスの脂肪組織から得られた脂肪細胞由来幹細胞(DFAT)を適切なホルモン刺激により成熟脂肪細胞に再分化させ、その脂肪細胞にFOXO1阻害薬を作用させることで、脂肪細胞でのFOXO1の役割を明確にすることを目標とする。 脂肪細胞におけるFOXO1の分子メカニズムも肥満や糖尿病といった研究分野では注目されている領域であり、本研究の主目的である早期発症糖尿病の病態形成においても、脂肪細胞の役割が重要であることから、この培養脂肪細胞を用いた研究は今後の展望も踏まえて必要な計画と判断される。
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Causes of Carryover |
令和3年度に実施予定であった膵β細胞におけるmRNA網羅的発現解析が、使用予定の早期発症糖尿病スンクス(EDBK)の作出遅れにより実行できず、本来令和4年度に実施予定であった解析および脂肪細胞由来幹細胞系の作出を先行して実施したために次年度使用額が生じた。この次年度使用額と本来の令和4年度請求額を合わせて、遅れている網羅的解析を行う予定としている。 なおEDBKスンクスのコロニーが十分に整備できなかった場合には、膵β細胞の網羅的解析を中止し、脂肪由来幹細胞系を用いた脂肪細胞でのFOXO1の機能解析およびmRNAの網羅的解析の実施へと計画を変更する予定としている。
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