2021 Fiscal Year Research-status Report
重症熱性血小板減少症候群の病態形成機序の核心解明を目指したネコ症例の病理学的解析
Project/Area Number |
20K06412
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
坂井 祐介 国立感染症研究所, 感染病理部, 研究員 (60615722)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | SFTS / 人獣共通感染症 / 獣医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、前年度に引き続きSFTS発症ネコの骨髄の組織学的検索を行った。これによりSFTS発症ネコの骨髄巨核球にはIgGやIgMの沈着が生じていることを明らかにした。また、これを定量し、巨核球におけるアポトーシス像との相関を調べたところ、抗体沈着とアポトーシス率が相関していることがわかった。このことからSFTSにおける血小板減少の原因は巨核球や血小板に反応する自己抗体による免疫介在性の病態である可能性が高いと考えられた。また、各種組織における細胞死の検索は、肝臓、消化管、リンパ節、肺を対象として検索を行った。リンパ節では、内因性経路を主体とするアポトーシスが特にヘルパーTリンパ球に生じていることが明らかとなった。これと共に、SFTS発症ネコでは濾胞領域における胚中心B細胞のマーカーであるBcl-6に陽性を呈する細胞がSFTS非感染ネコと比較して顕著に減少しており、胚中心活性化が抑制されていることが明らかとなった。ヒトのSFTS患者では免疫系の抑制が生じていることが明らかとなっているが、本研究の結果より、この免疫系の抑制はヘルパーT細胞のアポトーシスと、それに伴う胚中心形成の抑制によることが推測された。また、壊死性リンパ節炎の発症機序にもこのT細胞系を主体とするアポトーシスが関与している可能性が高いと考えられた。肝臓や消化管、肺に生じている細胞死は非アポトーシス性の細胞死であることが明らかとなった。本年度の研究成果に加えて、次年度に行う細胞死誘導因子の検索を合わせることで、血小板減少、肝臓や消化管の障害といったSFTSの病態形成メカニズムの解明に大きく貢献できるものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関を異動したため、研究遂行に支障が生じ、予定よりも若干の遅れが生じている。特に培養細胞系の実験は未着手であるが、次年度に行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
遅れの生じている培養細胞系のセットアップを行い、SFTSのNSタンパクやNタンパクの細胞死抑制作用の検討を行う。また、予定通りin situ hybridizationによる細胞死誘導因子の検索を行う。
|
Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが、令和4年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和3年度分についてはほぼ使用済みである。
|