2022 Fiscal Year Research-status Report
重症熱性血小板減少症候群の病態形成機序の核心解明を目指したネコ症例の病理学的解析
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20K06412
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
坂井 祐介 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (60615722)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | SFTS / 人獣共通感染症 / 獣医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
SFTS発症ネコのリンパ節の組織学的解析では、これまでに解析したB細胞系の胚中心形成阻害、T細胞系のアポトーシス増加に関連する細胞集団として濾胞樹状細胞および樹状細胞について検索を行った。濾胞樹状細胞マーカーであるFascinによる免疫染色ではSFTSV非感染症例でもSFTS発症症例でも明らかな数的異常が認められないことを明らかにした。濾胞樹状細胞は胚中心反応の進行に必要な細胞であるが、SFTS発症症例で認められた胚中心の異常への関与は薄いものと考えられた。また、樹状細胞マーカーであるDEC205を用いた免疫染色ではSFTS発症症例ではSFTSV非感染症例に比べてDEC205陽性の樹状細胞の顕著な減少が生じていることも明らかにした。これらの免疫担当細胞ポピュレーションの異常はSFTS患者で認められる免疫機能低下の原因の1つと考えられ、病態の理解や治療戦略の構築のために重要な知見と考えられる。 以上のようにリンパ球系・樹状細胞系の顕著な脱落や機能異常が生じている中でSFTSVに感染した形質芽細胞の生存がどのように維持されているのかを調べるために、SFTSV感染細胞における細胞死阻害因子であるc-IAP1、c-IAP2、survivin、Bcl-2、Bcl-XL、Mcl-1の発現を調べたところ、Bcl-XLおよびMcl-1の発現がSFTSV感染細胞で上昇していることがわかった。SFTSではウイルス感染形質芽細胞が血流を介して循環することで様々な組織傷害を引き起こす。このためウイルス感染細胞維持機構が解明できれば、ウイルス感染細胞に効率的な細胞死を誘導するという新たな治療戦略の構築につながるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の所属機関を異動に伴う前年度の遅れ、培養細胞系およびin situ hybridizationの条件検討の遅れを取り戻すに至らなかった。また、培養細胞系を用いた細胞死阻害因子の探索により発現変化のある因子が同定できなかった点も遅れの理由となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
in situ hybridizationについては計画通りに実施する。培養細胞系を用いたアポトーシス阻害因子の実験については計画通りRaji細胞を用いた実験を遂行する。培養細胞では未処置細胞でも細胞死阻害因子の探索の発現が多いことや生体内のSFTSV感染細胞と性状が異なることが原因として考えられたため、効率的にSFTSVの感染が生じるPBL-1細胞の利用や免疫染色を利用した発現検索による解析因子の絞り込みによりSFTSV感染で生じる細胞死阻害因子の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
研究遂行の遅れによる研究期間の延長に伴って、消耗品費や論文投稿費を次年度に使用する必要があるため。
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Research Products
(1 results)