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2020 Fiscal Year Research-status Report

セクレトグラニンⅢの機能的多様性と疾患関連性の解析

Research Project

Project/Area Number 20K06418
Research InstitutionNihon University

Principal Investigator

五味 浩司  日本大学, 生物資源科学部, 教授 (90293240)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2023-03-31
Keywordsセクレトグラニン / 内分泌細胞 / 分泌顆粒 / ペプチドホルモン / ジーントラップマウス / 神経膠細胞 / クロム親和性細胞
Outline of Annual Research Achievements

1.ジーントラップ法によって作製したセクレトグラニン3遺伝子欠損マウス(Sg3-gtKO)において,トラップベクターのレポーター遺伝子(LacZ)の発現を指標にSg3の発現を全身性に明らかにした。LacZ発現陽性の細胞・組織は免疫組織化学解析による陽性反応を示した細胞・組織とよく一致し,カノニカルな内分泌組織(下垂体,副腎髄質,膵島)の他に中枢神経系では視床下部神経内分泌ニューロン,小脳プルキンエ細胞,星状膠細胞といった従来発現が確認されていた細胞に加え,新たに大脳皮質錐体細胞,小脳皮質ゴルジ細胞,バスケット細胞および脳室上衣細胞などでの発現が明らかとなった。海馬では錐体細胞や顆粒細胞といったニューロンでの発現はほとんど認めず,星状膠細胞での強い発現が認められた。末梢神経系では網膜神経細胞,視神経星状膠細胞,神経節神経細胞および神経節膠細胞などで発現を認めた。また,培養系グリオーマ細胞(C6,RGC-6)においては,グルタミン酸刺激によるSg3の発現増加が確認され,これまで明らかとされていた神経-内分泌細胞におけるペプチドホルモン顆粒形成機能に加え,機能的な多様性があることが予測された。
2.Sg3は副腎髄質のカテコラミン産生細胞で発現していることを既に報告しているが,その機能的意義はよくわかっていないため,アミン顆粒形成への関与を想定し,小胞モノアミントランスポーター(VMAT1, 2)との相互作用について検討した。免疫組織化学ではSg3とVMATの共発現が確認され,Sg3と相補的機能をもつとされているセクレトグラニン2(Sg2)での共発現パターンとは若干異なっていた。ウシ副腎髄質を材料に共免疫沈降反応とSg3-GST融合タンパク質を用いたプルダウン法によってSg3,Sg2とVMAT間の相互作用について解析したが,これらの分子間での有意な反応を検出するには至らなかった。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1.Sg3-gtKOにおけるLacZレポーターの発現解析は順調に進み,Sg3発現細胞種の同定において神経系組織でこれまでに知られていなかったSg3発現細胞の種類を明らかにすることができた。また,LacZ活性染色と免疫組織化学を組み合わせることにより,神経膠細胞におけるSg3発現は神経膠細胞のサブタイプ全てにおいて均一ではない点も明らかにすることができた。培養グリア細胞におけるSg3の発現誘導に関しては,マウス初代培養アストロサイトにおける各種刺激薬物に対する反応が強い細胞ダメージを引き起こすことにより結果を得ることができなかったが,ラットグリオーマ細胞株(C6,RGC-6)を用いた誘導試験の結果では,反応性グリオーシス誘導時にSg3の発現亢進が認められるという結果が確かめられた。神経膠細胞におけるSg3の発現の機能的意義については,現時点では解明できていない。Sg3-gtKOにおけるLacZレポーターの発現解析によって得られた研究成果は国際学会誌に発表した。
2.Sg3発現がペプチドホルモン分泌細胞のホルモンの選別輸送に関わっているということ以外に,なぜ副腎髄質のカテコラミン産生細胞で発現しているのかについてはよく分かっていない。免疫組織化学レベルの二重染色によって副腎髄質VMAT1,VMAT2とSg3,Sg2との共発現パターンに差があることを見出したので,VMATとSg3の作用がカテコラミン産生細胞における機能的意義とつながると考えた。今回実施したこれら分子間の相互作用解析によって,少なくともアミン類を分泌顆粒内へ引き込む際にSg3が直接的に関わっているのではないことが推測された。

Strategy for Future Research Activity

1.Sg3-gtKOの副腎髄質において,カテコールアミン産生細胞の形態解析を電子顕微鏡レベルで行う。カテコールアミン産生細胞のうち,Sg3発現はアドレナリン産生細胞に比べてノルアドレナリン産生細胞でより強いことを予備的実験によって明らかにしているので,エポン樹脂包埋した電顕標本を作成し,それぞれの細胞の分泌顆粒の微細構造や分布密度について,野生型対照群と比較解析する。また,高親水性アクリル樹脂LR-whiteに包埋した電顕標本を作成し,金コロイド法による免疫電顕染色(ポストエンベディング法)によりSg3の分布局在について解析する。さらに,Sg3-gtKO 細胞において,Sg3以外のグラニンタンパク質(Chromogranin A, Chromogranin B, Sg2)やアドレナリン産生細胞マーカーでありノルアドレナリンのアドレナリンへの変換酵素であるフェニルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼ(PNMT)の局在に変化がないかについても解析する。
2.ペプチドホルモン産生神経細胞以外の神経細胞や神経膠細胞におけるSg3の機能を知る手がかりとして,小脳プルキンエ細胞,小脳バーグマングリアおよび海馬アストロサイトの細胞内局在を免疫電顕法によって解析する。
3.伴侶動物であるイヌの正常および神経・内分泌疾患を伴う組織でSg3の発現変化について免疫組織化学的に解析し,疾患との関連性を明らかにする。具体的には,日本大学動物病院にてクロム親和性細胞に由来する副腎褐色細胞腫と診断され,外科処置の際に採取された組織標本についてSg3,細胞増殖マーカーPCNA,シナプトフィジン等の分子について免疫組織化学的解析を行い,内分泌腫瘍組織におけるSg3発現の関与と血中カテコラミン濃度変化といった臨床所見との対応を明らかにする。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症による所属機関における業務内容が従来と大きく異なり,教育業務の負担増加(オンデマンド授業教材の作成とオンデマンド配信,少人数化した班構成による対面実習を4回繰り返し実施など)に起因して,研究計画遂行に掲げたエフォートが低下するとともに,予算執行にも影響が及んだことが研究費の次年度使用額が生じた主な理由である。また,学会発表についてもオンデマンド開催による参加により,旅費・宿泊費の支出がなかった。使用計画として,次年度計画している研究内容を行うための試薬類購入費(抗体,一般試薬)および電子顕微鏡解析関連の消耗品としての使用を計画している。

  • Research Products

    (4 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] Expression pattern of the LacZ reporter in secretogranin III gene-trapped mice2021

    • Author(s)
      Hiroshi Gomi, Airi Hinata, Tadashi Yasui, Seiji Torii, Masahiro Hosaka
    • Journal Title

      Journal of Histochemistry & Cytochemistry

      Volume: 69(4) Pages: 229-243

    • DOI

      10.1369/0022155421996845

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] SecretograninⅢジーントラップマウスにおけるLacZ遺伝子発現パターンの解析2020

    • Author(s)
      五味浩司,安井禎,日當愛梨,鳥居征司,穂坂正博
    • Organizer
      第163回日本獣医学会学術集会
  • [Presentation] イヌ涙腺上皮の形態ならびに組織化学的解析2020

    • Author(s)
      安井禎,宮田健也,中塚千枝,髙橋直紀,五味浩司
    • Organizer
      第163回日本獣医学会学術集会
  • [Presentation] フリーソフトを用いた腎小体の3次元構築の試み2020

    • Author(s)
      髙橋直紀,安井禎,五味浩司
    • Organizer
      第163回日本獣医学会学術集会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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