2020 Fiscal Year Research-status Report
Importin-α4欠損による精子の構造異常発症機序解明と形態形成の新機構探索
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20K06455
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
宮本 洋一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 細胞核輸送ダイナミクスプロジェクト, サブプロジェクトリーダー (10379084)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 核輸送 / Importin / 精子形成 / 雄性不妊症 / ノックアウトマウス / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、核-細胞質間物質輸送に働く分子Importin-α4の遺伝子(Kpna4)ノックアウト(KO)マウスが精子の顕著な構造異常を示すとする独自の発見を端緒に、Importin-α4が関わる新たな機能の解析を通して、精子の形態形成における新規分子メカニズム解明を目指すものである。 これまでの解析から、Kpna4KOマウスの精子は、運動性や頭部・尾部の構造に異常があることが明らかであった。今回、アクロソーム反応についても顕著な機能低下が生じていることが分かった。このことから、KOマウスが示す雄性不妊症は、精子の構造と機能における複合的な要因により生じることが明らかとなった。 さらに、野生型、KOマウスそれぞれの精巣で発現が異なる分子を探索する目的で質量分析を行い、計140個の発現変動分子を同定した。これら発現変動分子についてGO解析を行った結果、精子の構造や機能に関わるものが大半を占めることが分かった。次に、発現変動分子の転写を制御する転写因子をChIP-Atlasを用いて探索したところ、Taf7lやTbpl1が優位な転写因子であることが分かった。さらに興味深いことに、発現変動分子の多くがH3K4me3やH3K27acといったオープンクロマチンマークの制御下にあることも明らかとなった。 以上のことから、KOマウス精巣で見られる遺伝子発現プロファイルの劇的な変化は、Importin-α4の遺伝子欠損によるクロマチンのダイナミックな構造的・機能的変化に起因する可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき行った質量分析の結果、複数の重要な転写因子を同定するに至った。さらに、KOマウスの精巣ではクロマチンの大規模な構造的・機能的変化が起こり、それが精子形成に関わる様々な分子の発現に影響を与えていることを発見した。以上の結果から、本研究は当初の予定のとおり順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
KOマウスの精巣を題材とした質量分析とその後のChIP-Atlas解析から、Importin-α4は精子細胞の遺伝子発現に関わっていることが明らかとなった。我々は以前、Importin-αが酸化ストレス応答的に核に局在し、クロマチンと相互作用して遺伝子の発現制御を担うことを見出している(Yasuda and Miyamoto et al., EMBO J., 2014)。今回の発見は、ストレスの有無にかかわらず、Importin-α4が正常な精子細胞内においても遺伝子発現制御機能を発揮していることを意味している。今後は、精子の形態がドラマティックに変化する円形精子細胞を題材に、Importin-α4がどのようなクロマチン機能を発揮するかに着目しながら解析していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的な蔓延により、予定していた国内外の学会、研究集会参加を中止したため繰越金が発生した。次年度分の出張費についてはすでに計上しているため、本繰越分は消耗品費として細胞培養用試薬の購入に使用する予定である。
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