2021 Fiscal Year Research-status Report
免疫活性化受容体LILRA2のリガンド認識機構の解明
Project/Area Number |
20K06518
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古川 敦 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30727699)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 免疫受容体 / 分子認識機構 / LILR / X線構造解析 / クライオ電子顕微鏡 / タンパク質複合体 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
LILR(Leukocyte Immunoglobulin-Like Receptor)群は免疫細胞に発現する核貫通受容体型のタンパク質群で細胞内に免疫活性化モチーフITAMもしくは免疫抑制化モチーフITIMを持つ。ITIMを持つLILRB1やLILRB2はヒトの正常細胞に発現するHLA(Human Leukocyte Antigen)と結合し、免疫細胞の正常細胞への攻撃を抑制している。一方で、ITAMを持つLILRA群についての機能は長らく分かっていなかった。近年、LILRA群の中のLILRA2 は、細菌が分泌するプロテアーゼによって抗体のVHとCH1間が切断され、抗原認識部位を失った抗体(切断抗体)を認識することが明らかとなっている。これはこれまでの自然免疫受容体と異なる新たな細菌の感知機構であり非常に興味深い。これまでに、我々は、LILRA2のドメイン2が切断抗体の認識に関わっていることを明らかにしているおり、他のLILRファミリータンパク質のリガンド認識機構とは異なること可能性が高いことを明らかにしている。しかし認識機構の詳細は分かっていない。また、近年になって、LILRA2と結合する分子が新たに見出された。しかし、こちらのリガンド認識機構の詳細は不明である。本研究では、主に生物物理学的手法や構造生物学的手法を用いてLILRA2のリガンド認識機構を広く理解することを目的とした。 これまでに、SPR法を用いた実験により、LILRA2と新規リガンドが直接結合することを明らかにしている。新たに見つかったリガンドは細胞外ドメインの切断抗体を認識する部位とは異なる部位で結合していることが示唆された。また、新規に見出された分子がいくつか異なるコンフォメーションを取っていることも示唆された。現在コンフォメーションの違いが相互作用に与える影響を検討中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに見出されたリガンドのLILRA2の認識機構を明らかにするために研究を進めた。これまでの本研究グループの研究からLILRA2の細胞外ドメインの4つのドメインのうち、N末端から2つ目のドメイン2が主に切断された抗体を認識していることが示唆されていた。これまでに作製したLILRA2のキメラタンパク質や細胞外の全長でなく、いくつかのドメインが欠損したLILRA2を用いた結合実験の結果、新たに見つかったリガンドは切断抗体を認識しているドメインとは異なることが示唆された。今後はこのドメインを中心に変異体を作製した相互作用解析や複合体構造解析を進め認識機構の解明を進めていく。また、SPRでの相互作用解析を進めた結果、LILRA2と新規リガンドの結合は、LILRA2と切断抗体の相互作用に比べて若干弱いことが示唆された。また、構造解析に向けて多量のタンパク質が必要である。そのため、レンチウイルスを用いたLILRA2タンパク質発現系を構築した。また、新規に見出された分子がいくつか異なるコンフォメーションを取っていることも示唆された。コンフォメーションの違いを高速AFM (atomic force microscopy)で観察を進めた。さらに、コンフォメーションの違いが相互作用に与える影響を検討中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記で示した通り、新たに見出されたリガンドは切断抗体とは異なる認識機構をしていることを明らかにした。今後は、変異体LILRA2をさらに作製し、結合部位の推定を進める。また、変異体LILRA2を発現するレポーター細胞を作製し、細胞レベルで免疫活性化能についても解析する。さらに、切断抗体と新たに見出されたリガンドが同時に結合可能であるか、可能である場合、どのように免疫活性化能に影響を与えるかについても検討を行う。 新規リガンドがいくつか異なるコンフォメーションを持っていることも本研究で示唆されたことである。高速AFMやクライオ電子顕微鏡などを用いてそれらについて構造を明らかにし、LILRA2との結合にどのように影響を与えるか検討する。最終的には、LILRA2とリガンドとの複合体構造解析を目指す。
|
Causes of Carryover |
タンパク質精製に用いるカラムやSPR用のチップがこれまで購入したものを使用したため、今年度使用額が少なく済むことができた。翌年度は、細胞実験などに用いる培地や変異体を多く作成するためのDNAポリメラーゼや大腸菌用の培地などを多く購入する必要がある。さらにはタンパク質構造決定のためのスクリーニングキットやクライオ電子顕微鏡用のグリット等を購入予定である。次年度使用額と翌年度使用額を合わせた分を執行予定である。
|