2022 Fiscal Year Research-status Report
繊維芽細胞増殖因子FGF5と受容体の相互作用およびアプタマーの阻害機序の解明
Project/Area Number |
20K06529
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
坂本 泰一 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (40383369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 正隆 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (90322825)
杉山 成 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90615428)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アプタマー / FGF |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,試験管内分子進化法(SELEX法)を用いて,繊維芽細胞増殖因子FGF5に結合するアプタマーの取得にすでに成功している.このアプタマーは,FGF5に対して特異的に,そして強固に結合する(解離定数Kd = 約0.1 nM)ことが明らかとなっているが,その結合メカニズムは明らかになっていない.そこで本研究では, FGF5とアプタマーの相互作用を原子座標レベルで明らかにし,相互作用メカニズムを明らかにすることを目的としている.相互作用メカニズムを明らかにした後,論理的にアプタマーを改変することを目指している. SELEX法により得られたアプタマーを短鎖化した変異体を作成し,56残基でも結合活性を保持することを明らかにした.また,アプタマーは2つのステム・ループ構造と多岐ループを持つことを明らかにし,多岐ループが結合活性に重要であることを明らかにした.このように短鎖化することによって,立体構造の揺らぎが抑えられ,X線結晶構造解析における結晶化に有効であると考えた.そこで,アプタマーとFGF5を大量に調製して,様々な条件で結晶化を試みたが,結晶は得られなかった.次に,アプタマーをさらに短鎖化したり,DNA配列の導入したキメラ型のアプタマーの作成を試みたが,結合能が低下してしまった.再度,配列を検討し,NMRによるアプタマーの構造の確認を進めている. また, FGF5の受容体であるFGFR1cを調製した.表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた競合実験によって,アプタマーとFGFR1cは競合的にFGF5に結合することが明らかとなっている. FGF5がFGFR1cに結合するメカニズムも明らかになっていないので,FGF5とFGFR1cの複合体の結晶化も試みている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響による大学へ入構制限は緩和されたが,研究資材の価格高騰もあり,当初の計画より,やや遅れている. これまでに,構造解析のためにアプタマーを56残基に短鎖化することに成功している.アプタマーの二次構造予測に基づいて,アプタマーの末端ステムを短くし,SPRを用いてFGF5との結合活性を保持していることを確認した.さらに, T7 RNAポリメラーゼ変異体を用いた転写システムによりアプタマーを大量調製するとともに,化学合成によって修飾アプタマーも調製した.これらのアプタマーとFGF5を用いて,様々な条件で結晶化を試みたが,結晶は得られなかった.そこで,アプタマーの改変体を作成し,それらを用いて結晶化することを計画した.具体的には,アプタマーをさらに短鎖化したり,DNA配列の導入したキメラ型のアプタマーを作成したが,結合能が低下してしまった.再度,アプタマーの配列を検討し,NMRによるアプタマーの構造の確認を進めている. また,研究分担者の堀内は,FGF5の調製のためにGRPタグとカードランビーズを用いた独自の技術を利用しているが,このGRPタグを標的タンパク質に結合させる系を用いて,新しいアプタマーの作成も試みた.GRPタグによりタンパク質を固定化することにより,効率的にアプタマーを取得できることが明らかとなった.GRPタグがRNAと競合的にはたらくことによって,標的タンパク質に対するRNAの非特異的な結合を抑制していると考えられる. さらに,堀内が大腸菌による大量発現系を用いてFGF5およびFGFR1cを大量調製した.現在, FGF5,FGFR1c およびヘパリンの三者複合体の結晶化を試みている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,アプタマー,FGF5およびFGFR1cを大量調製してきた.構造解析用の試料を大量に調製する方法を確立できているので,今後はNMR解析とX線結晶楮解析に適した試料を探索し,それらを大量調製して,実際に構造解析を進める計画である.アプタマーの変異体も用いて,アプタマーとFGF5の複合体の結晶化を,様々な条件で行う.杉山が開発したゲルを用いる手法で結晶化を効率よく行う.結晶が得られたら,杉山がX線結晶構造解析を行う.X線結晶構造解析には,大型放射光施設SPring-8を利用する. また,結晶化が容易ではないことがわかったので,NMR解析を並行して進める計画である.NMR解析では,NMRシグナルの広幅化や重なりのため,複合体の立体構造決定は容易ではないが,アプタマーのNMR解析から二本鎖構造やループ部分の構造情報を得ることができる.さらに,アプタマーにFGF5を加えたときのアプタマーのNMRシグナルの変化から相互作用部位を特定する.また,FGF5を安定同位体標識してFGF5のNMRシグナルを帰属した後,アプタマーとの結合によりFGF5のNMRシグナルの変化を解析する.FGF5側のアプタマーが結合する面を特定し,アプタマー側の相互作用部位と合わせて,相互作用モデルを作成する. さらに,SPRおよび等温滴定型カロリメトリ(ITC)を用いて,相互作用の速度論的パラメータと熱力学的パラメータを明らかにし, FGF5とFGFRの相互作用をアプタマーが阻害するメカニズムを明らかにする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によって,研究資材の価格高騰によって入手困難な状況が発生した.そのため,当初の計画よりやや遅れてしまい,次年度使用額が生じた.次年度は,新たに試料を作成して結晶化を進め,X線結晶構造解析による立体構造決定を行う計画である. さらに,NMR解析も並行して進める.結晶が得られたら,杉山がX線結晶構造解析を行う.X線結晶構造解析には,大型放射光施設SPring-8を利用する.
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