2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K06579
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 倫太郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80563840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 正明 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (10253395)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中性子散乱 / 重水素化 / クリスタリン |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、細胞中の生体高分子のタンパク質濃度 (>100 mg/mL)に匹敵する部分重水素化 (72%重水素化)アルファクリスタリンの調製に成功した。この調製したアルファクリスタリンに対して100%重水中にて小角中性子散乱測定を行ったところ、100%重水中の軽水素体のアルファクリスタリン(0.45 mg/mL)とほぼ同等の散乱強度のみしか観測されなかった。この結果は、高濃度下における目的とする希薄濃度のタンパク質のみを選択的に観測できること、即ち細胞環境模倣下における目的タンパク質の構造解析が可能であることを保証している。他の水晶体であるベータクリスタリンの培養・精製条件に対して精査を行うことで、1Lの培養から15mg以上のベータクリスタリンを得ることに成功した。更に、このベータクリスタリンに対しても部分重水素化の検討を行い、水晶体内環境を模倣する構成成分として実験的に利用できることを確認した。 また、混雑環境はタンパク質のみならず粘性の上昇によっても再現できるかを確認するために、体積分率として50%グリセロール添加した溶液下におけるアルファクリスタリンのサブユニット交換を時分割重水素化支援小角中性子散乱法により追跡した。原点散乱強度の時間依存性から交換速度を評価したところ、50%グリセロール添加した溶液中と非添加溶液溶液中での交換速度は実験誤差範囲内で変化しないことが明らかとなった。この結果から、アルファクリスタリンに関しては粘性の上昇のみでは混雑環境を再現できないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国外実験に関しては、COVID-19の影響により現地で実験することは依然入国制限等の影響により実現できなかった。しかしながら、現地の装置責任者のサポートによるリモート実験を実施することにより予想以上の成果を得ることができた。加えて、2021年2月より国内の研究用原子炉JRR-3が再稼働したため、国内での小角中性子散乱実験がより容易且つ効率的に行えることができた。その結果、昨年度の研究の遅延を十分に解消することができた。今後、国内実験及びリモート実験を併用することにより、より効果的な成果が得られると強く期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2022年度においては、以下の研究計画を実施する予定である。(i)混雑環境を部分重水素化アルファクリスタリン及び部分重水素化ベータクリスタリンにより構築し、その溶液に対し希薄濃度の軽水素化ターゲットタンパク質 (ガンマクリスタリン或いはベータクリスタリン)を添加しターゲットタンパク質のサイズ等の構造情報を小角中性子散乱法で評価する。更に、その結果と希薄環境下での構造の相違を確かめる。(ii)昨年度においては、粘性の上昇のみでは混雑環境を再構成できない可能性を示唆する結果が得られた。そこで、昨年度構築した100 mg/mL以上の72%重水素化アルファクリスタリンと軽水素化アルファクリスタリンを用いたサブユニット交換を小角中性子散乱法により追跡を行い、グリセロール系との相違を議論する。並行して得られた結果に対して数値計算による再現を目指す。
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Causes of Carryover |
2021年度においてはCOVID-19の感染拡大に伴い想定していた国外施設への出張実験のキャンセルがあったため。代替案として装置責任者のサポートによるリモート実験を行った。
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[Presentation] Subunit dynamics in alpha-crystallin through deuteration-assisted small-angle neutron scattering2021
Author(s)
Inoue, Rintaro; Sakamaki, Yusuke; Takata, Takumi; Morishima, Ken; Wood, Kathleen; Sato, Nobuhiro; Okuda, Aya; Shimizu, Masahiro; Urade, Reiko; Fujii, Noriko; Sugiyama, Masaaki
Organizer
IUCr 2021
Int'l Joint Research
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