2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K06666
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 怜子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員 (70462702)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クチクラ変形 / ショウジョウバエ / キチン / クチクラタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエの変態初期には、細長い幼虫の体型から太く短い蛹の体型への変化が起こる。研究代表者らは以前、この体型の変化が幼虫の体を覆うクチクラ自体の変形によることを示した。そして、このクチクラの構成成分の一つであるタンパク質Obstructor-E (Obst-E)がクチクラの変形に必要であることを見出した。さらに、幼虫期にはObst-Eの作用によってクチクラが胴囲方向にプリーツ状に折り畳まれた構造をとること、変態初期にこの折り畳みが引き伸ばされることによってクチクラ全体が胴囲方向に伸びることが分かってきた。Obst-Eは3つのキチン結合ドメインを持つ分泌タンパク質で、二種類のスプライスバリアント(a, b)があり、in vitroでバリアントaはbよりも強いキチン結合能を示した。さらに、クチクラを折り畳ませる作用はバリアントa特異的であることが分かった。前年度は、このようなバリアントの機能の違いを生み出す機構を解析するために、二種類のバリアントタンパク質の一部の領域を入れ替えたキメラ分子を生体で発現させるためのコンストラクトを作製し、トランスジェニック系統の作製を完了した。本年度はこれらの系統を用いてクチクラ中でのキメラ分子の局在を解析した。その結果、入れ替えた領域の違いによってキメラ分子の局在に違いがあることが分かった。この結果は、Obst-Eタンパク質の二種類のバリアントが各々のアミノ酸配列にもとづいてクチクラの中でそれぞれ固有のサイトに局在する性質を持つこと、その性質の違いによってクチクラを折り畳ませる機能の強弱が生じている可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Obst-Eの二種類のスプライスバリアントの機能の違いを生み出す機構を明らかにするための大きな手掛かりが得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
obst-E機能欠損変異体のバックグラウンドにおいて各キメラ分子を発現させるレスキュー実験を行い、各キメラ分子がクチクラを折り畳ませる機能をどの程度もつか解析する。また各キメラ分子のin vitroにおけるキチン結合能を測定する。それらの結果を今年度の局在解析の結果と照らし合わせて、Obst-Eがクチクラを折り畳ませる機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初使用していたGAL4ドライバーと一部のキメラ分子発現系統を掛け合わせた子世代の生育状況が悪く、異なるGAL4ドライバーを検討する必要が生じ、本年度に計画していたレスキュー実験を次年度に行うこととなったため。生育に支障ないドライバーとの組み合わせが見出されたため、これを用いたレスキュー実験を、もともと次年度に予定していたキチン結合能解析と平行して次年度に行う計画である。
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