2020 Fiscal Year Research-status Report
Role of infochemicals from plants in community assembly of arthropods: focusing on historical contingency and priority effects
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20K06818
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
三木 衣代 (米谷衣代) 近畿大学, 農学部, 講師 (50618593)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 先駆者 / 先住効果 / 植物揮発性物質 / HIPV / 群集集合 / 香りシグナル / アブラナ属植物 / 動物ー植物相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生物群集の形成過程において「偶然性」と生物の定着順序が群集構造に与える影響(=「先住効果」)の強度を決定する機構は何か、という問いに答えることを目的とする。特に植物上に形成される昆虫群集に注目して、以下の2つの仮説を提案する。[仮説1]植物上に最初に定着する植食者(=「先駆者」)の種類の、植物個体間におけるばらつき(=偶然性の高さ)は、植物の香りシグナルの質と量で決まる。[仮説2]先住効果は,先駆者が引き起こす植物の誘導応答(=直接・間接防御)の種特異性が顕著なほど大きくなる。これらの仮説の検証のため、3種のアブラナ科アブラナ属植物(各種2品種の計6品種)を用いた実験を行い、植物上の節足動物の移入・定着・個体数、香りシグナルを含む二次代謝産物の時系列データを収集し統計解析を進める。これにより偶然性が強くかつ先住効果の大きな植物種が持つ香りシグナルと誘導応答の特性を解明し、群集形成過程が植物間で多様化する機構の理解をめざす。2020年度は[仮説1]の検証のため、植物の品種間で見られる先駆昆虫群集の違いや同品種内での群集構造のばらつきと初期移入に関わる可能性の高い香りシグナル(揮発性物質)の組成を比較することが必要である。そこで、野外にポット植えの健全植物(3種6品種)を配置して先駆昆虫の移入過程を1ヶ月間記録した。また、健全な各植物の揮発性物質を吸着材(Tenax TA)に捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で種類(質)と量を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2020年4月から実験を始める予定であったが、緊急事態宣言の影響で、実験助手の入構禁止及び、構内での実験が禁止されたため、実験に着手するのが6月以降になり、野外実験の開始が9月となったため、予定されていた、データ解析や食害を受ける前と後の植物の二次代謝産物の変化の比較等を完了できていない。しかし、野外実験を秋に行い群集の移入に関するデータや健全な状態の植物の揮発性物質の捕集分析を終えることができた。そのため、進歩状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は昨年度得たデータの解析を行うと共に、先駆昆虫による種特異的環境改変作用の強度の指標とする食害を受ける前と後の植物の二次代謝産物の生産量の変化を定量する。定量するパラメーターは香り成分・ジャスモン酸(JA)生成量・サリチル酸(SA)生成量および防御及び香り合成関連遺伝子(PR1,VSP1, LOXなど)の発現量とする。また、野外実験を行い、同一植物種上で異なる先駆昆虫を定着させた場合と、植物種間で同一先駆昆虫を定着させた場合の昆虫群集の形成パターンの比較を行い、先駆昆虫による先住効果と群集形成前の環境条件の効果(=植物種の効果)の相対的重要性を明らかにする。そのため、先駆昆虫3種をそれぞれ人為的に定着させたポット植え植物を圃場に設置し、先駆昆虫に続く初期群集形成過程を明らかにするため、2時間毎に2日間記録する。その後毎日20日間、さらに30日後,40日後、50日後、60日後に群集組成を記録する。さらに、先駆昆虫接種前から経時的に植物の香りを捕集することで、群集形成過程と香りの変化の関係について調べる。
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Causes of Carryover |
4月から実験を始める予定であったが、緊急事態宣言の影響で、実験に着手するのが遅れてしまったため次年度使用額が生じた。遅れを取り戻すために、昨年度人件費に回す予定だった予算の残り(約30万円)で実験補助員を追加で雇う。また、購入予定だった昆虫の移入記録用のカメラを9台購入する(約27万)。
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