2020 Fiscal Year Research-status Report
小胞体―細胞膜オルガネラ接合部のCa2+が神経可塑性、発生分化に及ぼす役割
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20K06864
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
御子柴 克彦 東邦大学, 理学部, 特任教授 (30051840)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IP3受容体 / 小胞体 / SOCE / 小胞体―細胞膜接合部 / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系に於ける細胞内Ca2+の役割の解明を進めた。疼痛は侵害から身を守る重要な侵害受容感覚である。大脳の青班核からのノルアドレナリン作動性の線維が脊髄でアストロサイトのIP3受容体2型(IP3R2)からのCa2+放出を介して侵害受容の制御に関わってことを明らかにした。更に従来の侵害受容とは異なる機構をもつ新しいタイプのアストロサイト群を発見した(Nature Neuroscience 2020)。「痒み」に対してはIP3R1がIP3R1/TRPC/Ca2+シグナル系として関与することを見出した(J. Allergy and Clinical Immunology 2020)。シナプスはシナプス前部、シナプス後部とそれを取り囲むアストロサイトの突起から成るトリパータイト構造を作っている。STED超解像蛍光顕微鏡でシナプスのin vivo での観察に成功した。アストロサイトは結節部とシャフト部からなる網目構造をとっていたが大部分の樹上突起のスパインは結節部と接触をしておりCa2+シグナルはしばらく結節部に留まりシャフト を介して周囲へ拡散していた。アストロサイトの各々の突起がスパインとの緊密なコミュニケーションを取ってシナプス機能を制御することが明らかとなった(Nature Communications 2020)。神経活動にともないアストロサイトの容積が変化することを明らかにした。この変化には伸展受容により活性化されたTRPA1チャネルから放出されるCa2+が関わることを明らかにした(J. Physiology 2020)。HEK細胞を用いてIP3R3が小胞体を介する細胞内のCa2+制御に非常に重要な働きをすることを明らかにした(Cells 2020)。これまでのIP3Rに関する総説をIP3 receptor plasticity underlying diverse functions.のタイトルで執筆してIP3受容体の蛋白質可塑性という新しい概念を提唱した(Annual Review of Physiology 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のCOVID-19及びその変異型によるパンデミックの為に、自宅から余り移動しないようにとの国からの指示が出ている。研究者自身の移動が制限されているとともに、通常の実験に必要な試薬類の購入や、各種実験機器の調整のために企業側の十分な人の動きが確保されていない。その結果、研究代表者の研究活動が大きく制限されている。しかしながらこれをカバーすべく、またそれを逆転すべく様々な計画を立てて研究計画が確実なものとなるように進めてきた為に、非常に効率のよい方法で課題が遂行されており、多くの成果が出ている。以上の様に現在はCa2+が神経可塑性、発生分化に及ぼす役割に関する研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19によるパンデッミックに対する国の方針にそう形で研究を進めていく。すなわち、試薬調達の為のルートの確保、実験機器の調整や、修理も考慮した企業との連絡網の確保に常に目をやりながら、新しい実験セットを組み上げて行く予定である。またコロナパンデミック終了を考慮しながら、迅速に効率よく実験が開始できるように体制を固めている。
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Causes of Carryover |
2020年度はCOVID-19及びその変異型によるパンデミックの為に、自宅から余り移動しないようにと国からの指示が出るなど申請課題担当の研究者自身の移動が制限されていた。それに伴って通常の実験に必要な試薬の購入や、各種実験機器の調整のために企業側の十分な人の動きが確保されず、その結果、研究代表者の研究活動が大きく制限されてきた。そのため、次年度使用額が生じた。2020年度の未使用額と2021年度の配分金額については、物品の購入(試薬・消耗品等)・研究打ち合わせのための旅費・論文発表のための費用(論文投稿料・英文校正料・印刷費等)・共同研究のためのサンプル発送費用に使用する予定である。
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