2022 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患関連分子の細胞内局在調節機構と神経変性・脂質代謝異常
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20K06881
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
曽根 雅紀 東邦大学, 理学部, 准教授 (00397548)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 前頭側頭型認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画においては、われわれが独自に見出したアルツハイマー病原因分子APPの細胞内輸送調節分子yata、および前頭側頭型認知症の原因分子VCPについて、個体遺伝学の手法を用いて、神経変性疾患関連分子の細胞内局在異常が神経変性および脂質代謝異常を引き起こす分子機序を明らかにすることを目指している。これまでに、yataについては、yata遺伝子ヌル変異体が示す表現型に着目し、関連分子との二重変異体の表現型解析や、関連分子の過剰発現による遺伝的レスキュー実験などの手法を用いて、病態表現型が生じるメカニズムを明らかにすることを試みている。特に、成虫脳において、yata変異体においては、キノコ体の顕著な形態異常が観察された。具体的には、キノコ体を特異的に染色するマーカー抗体である抗FasII抗体や抗Trio抗体を用いた免疫染色を行った結果、ローブ構造の欠損などの顕著な形態異常が高い頻度で観察された。また、強制発現させたGFPに対する免疫染色とと抗FasII抗体との二重染色の結果から、yata変異体においてはFasIIの細胞内輸送の異常が生じていることが示唆されている。この表現型について、詳細な記載的解析を進めるとともに、APPのショウジョウバエホモログであるAPPLや、他の細胞膜タンパク質との遺伝学的相互作用を調べる実験を進めている。また、VCPについては、2021年度に論文出版したマウスモデルを用いたデータに基づき、ショウジョウバエモデルを用いて、さらに解析を進め、マウスモデルのデータとショウジョウバエモデルのデータが整合性があり相互補完的であることを明らかにしてきた。本年度においては、ショウジョウバエモデルのデータを中心とした論文の出版を目指した研究を行った。特に、VCP変異体の成虫脳において見られる病態表現型に着目し、種々の分子種を用いたレスキュー実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前頭側頭型認知症の原因分子であるVCPについて、既に論文出版したマウスモデルのデータを参考にしながら、ショウジョウバエモデルのデータについて原著論文の出版を目指している。それ以外のデータについても、できるだけ早期の原著論文出版を目指して研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、yata変異体について、キノコ体形態異常、脳萎縮、脂肪滴形成異常などの表現型がどのような分子メカニズムの破綻によって生み出されるのかを、種々の分子を用いた遺伝的レスキュー実験や二重変異体の解析によって明らかにしていこうとしている。特に、これまでに、yataがゴルジ体から小胞体への輸送小胞であるCOPI小胞の軽瀬に関わることが明らかにされているため、このyataの分子機能が観察されている表現型とどのように関わるのかを明らかにしていく。前頭側頭型認知症の原因分子についても、原著論文の出版を目指してさらに研究を続けていく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗の都合により、消耗品の購入額が予想よりも少なくなった。次年度においては、ショウジョウバエの交雑実験および表現型解析実験をさらに進めていくために、繰り越した研究費と次年度以降請求額を用いて、ショウジョウバエ飼育用品を含めた消耗品を購入していく予定である。
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