2021 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質形成における霊長類型の神経幹細胞産生に関わる遺伝子の網羅的探索
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20K06893
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
廣瀬 智威 横浜市立大学, 医学部, 講師 (20381668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大脳形成 / 神経幹細胞 / ヘッジホッグシグナリング / 一次シリア / PAR3 (PARD3) |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類型の神経幹細胞産生に関わる遺伝子を探索するため、これまでに終脳特異的PAR3欠損マウス(Par3 cKOマウス)で認められる同型の神経幹細胞の過剰産生に伴って異常活性化しているシグナル伝達系を同定してきた。2021年度は、このシグナル伝達系の制御に関わる一次シリアについて解析を進め、超解像顕微鏡を用いてPar3 cKOマウスの終脳を観察することで一次シリアの形態異常、及び当該シグナル伝達経路の主要因子の分布異常を定量的に明らかにした。更に、このシグナル伝達系の阻害剤を母体に投与した際のPar3 cKOマウスの胎児終脳における神経幹細胞増殖率の変化を解析し、前述の異常活性化が実際に神経幹細胞の過増殖の要因となっていることまでを明らかにした。 以上の結果はPar3による神経幹細胞の新たな増殖制御機構を示すものであることから、これをまとめて論文投稿した。論文審査によって新たに求められた各種のリバイス実験を進め、これまでの結果を更に補強する結果を得た。これらの成果を元に、教育講演と学会発表を行った(各1件)。 並行して実施しているいくつかの共同研究でも進展が得られた。特に、大脳以外の神経発生過程でもPAR3の役割を解明すべく、自身で樹立したPAR3コンディショナルノックアウトマウス系統を共同研究先(米国1件)に輸送した。学内共同研究では、ヒトの大脳皮質形成異常に関連する因子の機能解析を行い、病態の分子機構の理解を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果をまとめて投稿した論文がリバイスとなり、多くのマウス胚を用いた実験を要求された。これに対応すべく条件検討を含めた新規実験や追加実験を行い、得られた結果を定量解析して再投稿の準備を進めた。このように主に論文採択に向けた研究に注力していたため、当初の目的に照らした進捗状況は「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定に従い、終脳特異的PAR3欠損マウスで霊長類型神経幹細胞(OSVZCs)の過剰産生に伴って発現変動する候補遺伝子の網羅的探索を実施すべく、マウス胚の準備、RNA seq解析を進める。また、当該のモデルマウスで認めていた神経幹細胞のシリア形態の異常の分析を進めるべく、関連分子の分子間相互作用について、分子生物学的評価を開始する。 論文はリバイス実験の結果などに基づいて結論を更に補強することができて再投稿を完了させたので、2022年度中の採択を見込んでいる。 今後は、ヒトiPS細胞によるモデル実験系の応用も視野に入れており、今後の社会情勢を鑑み、iPS細胞培養に関するハンズオンセミナーに参加するなど、技術習得を進めたい。
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Causes of Carryover |
投稿中の論文採択に向けたリバイス実験に注力する必要があったため、2021年度中はその実験に全ての動物実験リソース(終脳特異的PAR3欠損マウス)を費やすことになった。その結果、計画を変更してでRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を実施せざるを得なくなった。リバイス実験は2022年度当初に完了させ、論文を再投稿して採択を目指す。また、論文作成に集中していて準備が進められなかったヒトiPS細胞を用いた二次元神経ロゼット培養法の利用を目指し、実地でのハンズオン培養研修の機会が再開され次第、参加して実験系の確立に努める。
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