2020 Fiscal Year Research-status Report
2種類の方位選択性網膜神経節細胞の機能における差異の同定を目指して
Project/Area Number |
20K06900
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
星 秀夫 東邦大学, 医学部, 講師 (30568382)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 網膜 / ギャップ結合 / 局所神経回路 / 網膜神経節細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちが目にしている様々な情報(視覚情報)は、受容器である網膜でとらえ、網膜局所神経回路で処理された結果が、活動電位として視神経を介して大脳視覚野に送られる。つまり、脳は網膜で作られた活動電位という情報から、私たちが見ている様々な視覚情報を再構築していると考えられている。 網膜では、網膜神経節細胞(RGC)が基本的に活動電位を生み出す。RGCの活動電位(機能)は、それとシナプス結合でつながる局所神経回路により生成されるため、その機能を知るには、RGCとシナプス結合する双極細胞やアマクリン細胞からの入力がどのようになっているのかを理解することが必要である。 本研究では、興奮性入力するON型双極細胞(Mb1)に注目した。既に私たちは、Mb1がこのRGCに入力すること知見を得ている。このMb1とは、通常のシナプス結合とは違う、異所性のシナプス結合様式をとっていることを示唆した(Hoshi and Sato, 2018, J Comp Neurol)。RGCの樹状突起とMb1の軸索末端ではない、軸索が近接しており、さらにそのプレ側にリボンシナプスマーカーの陽性像が局在していたのである。このMb1は、隣接するMb1と樹状突起間でギャップ結合を介してつながっているが、対極の軸索末端ではつながっていないということが電気生理学実験により報告されている。しかし、Mb1軸索末端間の距離は網膜部位によって変化する。そこで、Mb1の軸索末端部周辺の構造を共焦点顕微鏡で解析した。その結果以下の知見を得た。①網膜周辺部に、数は少ないが、隣接するMb1の軸索末端同士が、非常に近接してつながっているような光顕像を得た。②一部にはギャップ結合陽性像が得られたが、見られないものも存在した。陰性像は通常、ネガティブデータとして処理してしまいそうだが、ギャップ結合とは違う別の結合様式を類推させる形態所見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染拡大の影響による授業カリキュラムの大幅変更などにより、R2年度は研究時間が大幅に減少した。そこでその限られた時間でできる、目的の神経節細胞と局所神経回路を作り出す双極細胞の形態学実験とその解析を中心に研究を行った。本研究結果は、メイン研究からの派生実験として別論文にしたいと考えている。そのため、主目的の実験の進行がやや遅れてしまった。しかし、この研究を通じて、生きた網膜の全載標本(whole-mounted retina)から目的の双極細胞と神経節細胞を同時に同定できる確率が高まってきている。これは、次年度以降の電気生理学実験をよりスムーズに行うために非常に重要なことであり、研究全体としては有意義なものとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、R2年度の双極細胞の形態学実験の継続と、方位選択性を持つ2種類の神経節細胞を用いた電気生理学実験を行う。双極細胞の形態学実験は、メイン研究からの派生実験として、単独の論文作成を行う予定である。ここでは、新しい結合様式を明らかにするために、いくつかの抗体を試したい。また、方位選択性神経節細胞からの電気生理学実験も並行して行う予定である。この電気生理学実験では、ドーパミンD1受容体のアゴニスト・アンタゴニストを用いた薬物実験や、局所回路内の双極細胞と神経節細胞の2細胞記録を予定している。 さらにR3年度から、臨床との橋渡し研究をするための最新情報を得るために、東邦大学医療センター大森病院神経内科の狩野修氏に研究分担者として本研究に参画していただく。積極的に討論を行うことで、難病の早期診断の橋渡し研究につながる次の研究につなげる。
|
Causes of Carryover |
R2年度は、コロナ感染拡大の影響による大学授業カリキュラムの大幅変更のため、研究時間が大幅に縮小してしまった。このことにより、薬物投与による電気生理学実験を行うことができなかった。この実験で用いる予定であった試薬の購入は、保存性を考慮すると、使用直前が好ましい。そのため、R2年度の試薬購入に用いる予定であった費用をR3年度に繰り越した。 R3年度は、繰り越した予算から、まずドーパミンD1受容体系の試薬やギャップ結合阻害剤などの試薬を購入し、薬物(試薬)投与による網膜神経節細胞のギャップ結合の開閉調節による方位選択性の変化を電気生理学的手法で解析する。同時に記録後の標本を使って形態学的実験も行う。さらに、R2年度に得た知見である双極細胞の未知の結合様式を明らかにしたい。そこで、残された予算から数種類の抗体を購入し、免疫組織化学を行い、新しい結合様式の詳細を明らかにする。
|
Research Products
(1 results)