2021 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫克服を目指した共有結合性官能基含有治療薬の開発研究
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20K06939
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中山 淳 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (60743408)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 天然物 / 全合成 / マクロライド / 医薬化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会に突入している日本にとって加齢により罹患リスクの高まる疾患の克服は急務の課題と言える,これまでに申請者等は独自に見出した新規14員環マクロライド化合物compound#13を基盤として多発性骨髄腫の克服に挑戦している.Compound#13は,動物モデルにおいても顕著な治癒活性を示す化合物であるが,その生体内作用標的分子は明らかとなっていない.2020年度では,compound#13の化学プローブ開発を進めていたが,芳香環状の置換基をメチル基からプロパルギル基へと変更すると,14員環マクロライド構築の段階で分子内に存在する二重結合の幾何異性の選択性が変化するという知見を得ていた.現状の合成経路での化学プローブ化は困難と判断し,これまでの多様性指向型合成経路とは異なる,標的指向型合成経路の開発を行うこととした.特に問題となっていたベンジル位二重結合の幾何異性制御は分子間Heck反応を駆使することで解決できると考えた.さらに,特徴である14員環マクロライド構造は分子内光延反応を適用することで構築することとした.分子間Heck反応に用いる基質合成はこれまでの合成経路を改変することで迅速に達成した.合成した基質を用いて分子間Heck反応を行ったところ,反応は円滑に進行して望みの立体化学を有する化合部を得ることに成功した.さらに,分子内光延反応によりマクロ環化も十分な収率で進行した.最後に全ての保護基を一気に除去することで compound#13の新たな全合成経路を確立することに成功した.この合成経路の中間体に化学プローブに必要なプロパルギル基を導入することにも成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度では,これまでの全合成経路では供給困難であったcompound#13の新規供給経路を確立することができた.この合成経路を用いることで,Click反応の足掛かりとなるプロパルギル基を導入することにも成功しており,生体内標的分子の釣り上げ実験に必要な化合物を獲得することができた.また,本合成中間体はプロドラッグ化合物への変換も可能であり,現在がん微小環境応答性ペプチドの合成ならびにタンパク精製・標識用リンカー開発も行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
Compound#13の化学プローブ化には成功しているものの,その生物活性はまだ測定できていない.今後は,化学プローブの骨髄腫細胞に対する細胞傷害活性試験を実施し,元化合物であるcompound#13の細胞傷害活性を維持できているかを確認する.その後,骨髄腫生細胞と細胞破砕液を用いて標的分子の釣り上げ実験を実施する.
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Causes of Carryover |
2020年度はcompound#13の大量合成と各種生物活性評価を行う予定であったが,comopound#13自体の化合物供給を十分に行うことができず,新規合成経路の小規模検討を行っていた.その一方で,想定以上に合成経路開発が進んだことから,当初予定していた物品購入費を大幅に削減することができた.2022年度では,生物実験や釣り出したタンパク質の分析費が今後必要となることから,繰り越しを希望している.
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Research Products
(11 results)