2021 Fiscal Year Research-status Report
X線吸収端微細構造測定法による医薬品原薬評価法の開発と評価
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20K07001
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
野口 修治 東邦大学, 薬学部, 教授 (60237823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 浩典 東邦大学, 薬学部, 講師 (20625694)
伊藤 雅隆 東邦大学, 薬学部, 助教 (30792410)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | X線吸収スペクトル測定法 / X線吸収端微細構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線吸収スペクトル測定法は、試料にX線を照射して、X線のエネルギー(波長)別の吸光度を測定する分析法である。X線吸収スペクトル測定法において、特に吸収端と呼ばれる元素固有のエネルギー値近傍のスペクトル形状(X線吸収端微細構造、XANES)に着目し、XANESの測定により医薬品原薬の結晶形の同定・評価に適用可能かを検討した。Brが共有結合している医薬品原薬ブロムヘキシン塩酸塩の4種の結晶形について、Br-K吸収端のXANES測定をあいちシンクロトロン光センターで実施した。これらの結晶試料ではXANESスペクトルの形状が結晶形により固有であった。単結晶X線解析法により各結晶構造を決定したところ、ハロゲン結合の有無やBrに隣接するアミノ基がsp2あるいはsp3の混成軌道となっていることなど、Brの電子状態に影響を与えうる化学的環境が結晶形毎に異なることが明らかとなった。こうした違いがBr原子の電子軌道の形状あるいはエネルギーを変化させたために、XANESスペクトルの形状の違いとして観測されたと考えられた。さらに、複数の製薬企業から上市されているブロムヘキシン塩酸塩錠について、アルミ箔とポリプロピレンからなる製剤包装中のままXANES測定を行い、標準結晶試料のXANESスペクトルとの比較を行ったところ、錠剤の中の結晶形を同定することができた。このように、XANES測定法は医薬品原薬の結晶形同定のみならず、包装中の製剤のなかの有効成分の結晶形まで同定できる優れた方法であり、製剤学研究に広く応用可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Br含有医薬品原薬において、X線吸収スペクトルが結晶形毎に異なることを初めて明らかにすると共に、スペクトル形状が結晶形毎に異なる原因を結晶構造に基づいて明らかにできており、研究は順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
X線吸収スペクトル測定法は医薬品製剤の評価に広く適用する研究を推進していく予定である。
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