2021 Fiscal Year Research-status Report
An implication of transporter-mediated regulation of brain PG concentration for mental diseases
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20K07018
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中西 猛夫 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (30541742)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / トランスポーター / 中枢神経系 / 炎症 / うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにマウス腹腔内にリポ多糖(LPS)を投与した炎症モデルで、SLCO2A1欠損によりPGE2やPGD2の脳内間質液中濃度が低下し、SLCO2A1がPG類を細胞外へ分泌することが示された。しかし、PG類を細胞へ取り込むSLCO2A1の機能からはこれらの結果を十分に説明できず、PG脳内動態の影響因子を包括的に理解する必要が生じた。
本年度は、SLCO2A1機能評価可能な非代謝性の代替基質を見出し報告した。さらに、SLCO2A1以外のPG類を輸送する膜輸送体(Slco1a4、2b1、3a1、Oat3、Abcc1、Abcc4)に関する基本的な情報を収集するために、マウス脳各組織(大脳皮質、視床下部、海馬)および単離した細胞(ミクログリア、アストロサイト、神経細胞)を用い、遺伝子発現を解析した。脳の各組織で、全ての膜輸送体のmRNA発現が確認された。Slco2b1の発現は大脳皮質に比べ海馬で約3倍高値を示した以外は、組織間の発現量に顕著な差はみられなかった。また、LPSを投与した個体から採取した全ての脳組織でOat3の発現が低下した。単離細胞を用いた検討では、Slco1a4、Abcc1及びAbcc4の発現に異なる細胞間で有意な差はみられなかったが、Oat3及びSlco3a1はアストロサイト、Slco2a1は神経細胞、Slco2b1はミクログリアで最も高い発現を認めた。これらの遺伝子の機能やPG動態に果す役割をin vitroで検討するため、マウス由来株化細胞MG6(ミクログリア)およびNeuro2a(神経細胞)で各遺伝子の発現を検討しているが、現在までin vivoと整合性ある結果は得られていない。一方、PGE2を排出することが報告されているAbcc4については、現在CRSPR/Cas9によりMrp4欠損マウスを作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗は当初より遅れ気味である。本研究申請について提案された研究計画①-④の進捗状況ともに理由を記載する。⑤【代謝物網羅解析】平成4年度に実施予定であり、現時点で開始していない。 ①【PG膜輸送体の同定と膜透過機構】対照とする膜輸送体の遺伝子発現を指標に、in vivoで使用可能な細胞種の選定を行っている。脳の各組織における膜輸送体の発現プロファイルをmRNAレベルで把握できた。しかし、脳から単離された細胞における膜輸送体の発現プロファイルは株化細胞株とは一致しなかったため、in vivoを適切に反映するモデル細胞を選定できず中枢神経系の膜輸送体機能解析が進んでいない。 ②【うつ病マウスモデル脳PG動態解析】うつ病モデルについてはLPSを腹腔内投与した炎症モデルを中心に研究を進めている。これまでに、PG動態に役割が示唆されているSLCO2A1を欠損するマウスでPGD2の動態解析を実施した。SLCO2A1以外の輸送体の寄与については現在検討中であるが、既知情報をもとにAbcc4に着目した検討を計画している。 ③【神経細胞への影響】研究が進んでいるSLCO2A1を中心に輸送体機能が神経細胞へ及ぼす影響を検討中である。BDNFは神経保護作用を有するペプチドであるため、現在Slco2a1を欠損するBDNF-Luc Tgマウスを作製中である。 ④【情動やストレス応答性の変動】情動行動の変化については、Slco2a1ヘテロKOマウスを用いた強制水泳試験およびオープンフィールド試験を予備的に実施した。Slco2a1 KOマウスの離乳率が低く、繁殖により実験に必要数な数が得られていない。現在、ヘテロマウスにおいて、トラベルディスタンスが低下するなどの傾向がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、PGE2およびPGD2の脳内動態/分布調節に少なくともSLCO2A1が関与することが明確になったため、SLCO2A1の発現およびPG輸送能を分子レベルで明らかにする検討を推進していく。一方、PG類を認識する膜輸送体は複数報告されているため、マウス脳切片を用いたin situ ハイブリダイゼーション法を用い、脳の各組織におけるPG膜輸送体の発現を明確にし、発現が確認された膜輸送体とSLCO2A1によるPG輸送との関係性を明らかにする必要がある。
さらに、様々なうつ・炎症モデルの中からLPSを全身に投与するモデルを選択し、PG膜輸送体の発現や機能が情動行動に及ぼす影響をオープンフィールド試験や強制水泳試験などにより、行動薬理学的な観点から評価する。個体レベルの行動観察については、Slco2a1 KOマウスおよび現在作製中のAbcc4 KOマウスを用いた検討を計画中である。
ミクログリアから放出されるPG類には神経炎症との関連が指摘され、神経を保護する脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現はPGにより調節されるため、BDNFレポータートTgマウスを用い、膜輸送体の機能の変動とBDNFの発現・分布変化と関連を明確にすることで、膜輸送体が神経炎症に及ぼす影響について検討する。行動様式などに変化が観察される場合は、脳内脂質代謝物の変化についても追跡したい。
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Causes of Carryover |
平成31年(令和元年)に研究代表者が現所属機関に着任して以来、研究室の立ち上げに努めているが、一昨年度、昨年度とコロナ禍の影響をうけ、予想以上の時間を要している。令和3年になり、ようやく実験を実施する体制が整った。したがって、本研究の進捗には当初の計画より遅れが生じ、一部予算が令和4年度に繰り越された。令和4年度では、研究室運営も軌道にのり、当初予定されていた計画については変更・縮小せず、実施する予定である。
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Research Products
(6 results)