2021 Fiscal Year Research-status Report
薬剤師のポリファーマシーへの介入は認知機能低下やフレイルを予防・改善できるか
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20K07174
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石崎 純子 金沢大学, 薬学系, 教授 (60401890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 正仁 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (80191336)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高齢者 / ポリファーマシー / 認知機能 / フレイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、健常高齢者を含む高齢者集団を対象として、レセプト情報や処方情報はなく、面談より収集した薬物療法に関する情報と、認知機能や身体機能との関連を調べる。これによって、高齢者に対する薬物療法適正化による認知機能の低下や身体機能の低下(フレイル)の予防・改善に関する仮説を得る。さらに、この仮説に基づく臨床試験を実施し、薬剤師による薬物療法への介入が、認知機能の低下やフレイルを予防・改善につながるかを明らかにする。 地域高齢者を対象としたコホート研究(中島町研究)の1クール分(2016~2018年度)、全2468名の健診情報より、住民の薬物療法と、認知機能やフレイルとの関係を調べた。 医薬品添付文書情報より抗コリン作用の強さを評価できる基準を作成し、中島町研究参加者が使用していた医療用医薬品(全510品目)についてスコア分類を行った。この基準を用いて認知機能に対する抗コリン作用薬のリスクを検討した結果、抗コリン総スコアと認知機能低下にはスコア依存的な関連が見られ、抗コリン作用薬の使用がリスクとなることが示唆された。 薬剤を作用機序別に分類し、認知機能に対する各薬剤のリスクを検討した結果、降圧薬および脂質異常症治療薬使用群で認知機能低下を有する割合が有意に低いことがわかった。さらに、これらを作用機序別に分類した結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬およびHMG-CoA還元酵素阻害薬の使用群でその割合が有意に低かった。 フレイルと薬物療法については、各群の平均使用薬剤数は、健常群(3.3剤)、プレフレイル群(4.7剤)、フレイル群(8.0剤)と、段階的に増加していた。作用機序別では、糖尿病治療薬、泌尿器科用薬、精神刺激薬、精神賦活薬の使用がフレイル群で有意に高いこと、一方、HMG-CoA還元酵素阻害薬の使用が有意に低いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長期にわたるコロナ禍において、社会活動も感染対策を取りながら実施されるようになるなど進展がみられ、薬局での健康フェアなどの催し物も開催されるようになってきた。しかし、短時間での開催や、参加人数に制限を設けるなど、当初予定していた来局者への啓発活動の効果を臨床研究で明らかにすることができない状況が続いているため。
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Strategy for Future Research Activity |
長期にわたるコロナ禍において、社会活動も感染対策を取りながら実施されるようになるなど進展がみられ、薬局での健康フェアなどの催し物も開催されるようになってきた。しかし、密を避ける・高齢者などハイリスク集団への配慮の観点より、短時間での開催や、参加人数に制限を設けるなど、当初予定していた来局者への啓発活動の効果を臨床研究で明らかにすることは依然、厳しい状況である。 そこで、薬局に、共同研究者が開発したタッチパネル式認知機能検査機を設置し、処方箋調剤を希望する来局者を対象とした前向き臨床試験を実施する。希望する来局者に対して同意を得た上で、認知機能と薬物療法、特に、昨年度得られた「降圧薬および脂質異常症治療薬」と認知機能との関連を調査する。また、後ろ向き臨床試験として、高齢者に対する処方情報より「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」にある「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の使用状況を調査し、薬剤師による効果的なポリファーマシーへの介入手段を構築する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍にあり、学会の開催形式がウェブ開催、薬局での健康フェアの開催中止や規模縮小などが重なり、旅費や謝金の支出が抑えられた。昨年度末より、来局者への情報提供・啓発方法を見直したやり方(タッチパネル式認知機能検査機による認知機能の評価)を試行しており、今年度より本格的に導入して研究を遂行する。
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Research Products
(4 results)