2021 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児の成熟度と深層学習数理モデルを融合した薬物療法の最適化
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20K07189
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
辻 泰弘 日本大学, 薬学部, 教授 (20644339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 宜明 日本大学, 薬学部, 教授 (10199896)
山本 善裕 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70452844)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工知能 / 数理モデル / 小児 / 深層学習 / 薬物動態 / 薬物治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では小児患者を対象として生理学的数理モデル解析を行い、薬物血中濃度・治療効果の経時的な予測に深層学習を応用する手法を開発することである。そこで2つの研究計画を立案した。①深層学習による出力値の判断根拠を明確に説明することが可能なモデルを開発する②小児患者のように利用可能なデータが少ない場合における学習方法を提案する。2020年度は、R2の課題について2つの実験を実施した。 R2-1_機械学習に基づく分類木を用いたリネゾリド誘発血小板減少症予測(終了済み) R2-2_ビッグデータを用いた2型糖尿病治療薬の併用効果の検証(継続中) 2021年度は、R3の課題について実験を行ったので成果概要を報告する。 R3-1_ディープラーニングによる薬物血中濃度・治療効果の小児個別化モデル(継続中) 本研究の目的は、(1) ニューラルネットワーク (ANN) を経時的な小児薬物動態の予測に応用する手法を開発し、その有用性を評価すること、(2) SHAPを応用することで、解釈可能な透明性のある人工知能モデルを開発することの2つである。ANNによって推定されたCLおよび既報の分布容積および吸収速度定数の値を1次吸収過程を含む1コンパートメントモデルの式に代入し、薬物血中濃度の予測値を算出した。ANNによって出力されたCLに対する各入力値(患者情報)の影響を評価するために、学習済みモデルにKernel SHAPを適用し、SHAP値を算出した。Kernel SHAPの実行には、shap (version 0.36.0) モジュール内のKernelExplainerを使用した。従来のpopPK modelと比較して高い予測精度を示した。また、SHAPを応用しPKパラメータの出力に対する各入力値の貢献度を算出することで、構築したモデルの科学的な妥当性を評価することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID19の流行により研究分担者との打ち合わせが実施できず、小児患者のみを対象する臨床試料(血液検体、医療情報)の取得が困難をきわめた。さらに、大学への入構制限もあり、当初の計画通りの実験を完遂することができなかった。そこで2021年度は、深層学習を実際の治療に応用する際に問題点である経時的なデータの解釈可能性の向上と各特徴量(入力値)の貢献度を数値化する手法研究を実施した。モデルの解釈可能性はモデルの予測精度が上がるほど低下する傾向にあり、深層学習だけではなく、近年汎用されているアンサンブル学習や勾配ブースティング法においても問題となっている。そこで、出力に対する各特徴量(入力値)の貢献度を数値化する手法の一つとしてSHAPが提唱されている。SHAPは、協力ゲーム理論におけるshapley値を機械学習における各特徴量の貢献度を算出する手法として拡張したものである。SHAP値を算出することで、どの特徴量が予測値の出力に対して影響が大きいのか、およびその影響の正負を知ることが可能であることを証明した。この成果は学術誌に公表したが、小児患者検体が想定より集積されていない現在の進捗状況は、当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在小児患者の血液検体および患者情報を集積中であるが、本研究の実施途中で小児患者情報(診療情報)データの欠損値の取り扱いやデータのバラツキをどのように処理するか課題が生じた。そこで2022年度は小児患者情報データの特徴を学習し疑似データを生成する試みまで行う予定である。具体的には以下の取り組みに着手することを計画している。 ①Generative Adversarial Networks (GAN)を応用して疑似患者データ生成 ②次元削減手法のUMAPを応用して実患者データと疑似患者データの類似具合を可視化 この取り組みは本研究課題の核心である「小児患者のように利用可能なデータが少ない場合における学習方法を提案する。」に直結する成果が得られるものと予想している。
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Causes of Carryover |
COVID19の影響で入構制限の期間などがあり、当初予定していた実験計画を若干変更した。小児患者の血液検体の採取が順調に進捗しなかったが、2021年度後期から薬物濃度測定ができる環境が整った。2022年度は薬物濃度の測定に対して試薬などの消耗品費が必要である。
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Research Products
(14 results)