2021 Fiscal Year Research-status Report
T細胞皮質下アクチンの形成分子機構及びTCRシグナルにおける役割の解明
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20K07287
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
Thumkeo Dean 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (40372594)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | T細胞 / 皮質下 / アクチン / formin |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞は抗原提示細胞により提示された非自己ペプチドをT細胞受容体 (TCR)で認識することにより、細胞内にシグナルが伝わり、免疫反応を惹起する。その際、T細胞は抗原認識の際抗原提示細胞と密に接着し、免疫シナプス (IS) という構造を形成し、繊維状アクチン (F-アクチン) を筆頭に細胞骨格が大規模に再構成される。申請者はこれまで、直線状のF-アクチンを重合するフォルミンファミリータンパクがISにおいて、アクチンの再編成を介してTCRシグナルに促進的に働くことを明らかにしてきた(Thumkeo et al., Science Advances, 2020). 昨年度は、申請者と米国コロラド大学との共同研究で、さらに、生理活性リン脂質LPAが抗原刺激を受けたT細胞のformin分子mDia1の局在と活性化を阻害し、アクチン細胞骨格の構造に異常をきたすことを報告した(Kremer, Buser, Thumkeo et al., PNAS 2022).現在は、LPAからmDia1へのシグナル伝達経路に関わる因子を同定し、分子メカニズムの詳細の解析を進めている。 一方、TCR刺激を受けていない平常状態のT細胞の細胞骨格の構造及び分子制御機構について、以前と変わらずまだ不明な点が多い。本研究では、forminに加えて、もう一つのアクチン重合因子因子であるArp2/3にも着目して、これら分子の役割の解明を目指している、昨年度までは、マウスCD8 T細胞にアクチンの傾向プローブであるEGFP-Lifeactを導入し、超解像度顕微鏡のライブイメージングによって、抗原刺激前後のアクチン細胞骨格の構築観察を行なった。昨年度は、formin阻害剤に加えて、Arp2/3阻害剤を加えた時の構造変化について観察をさらに行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、これまで申請者が報告したTCRシグナルとIS形成におけるforminタンパクによるアクチン制御をさらに発展させ、その上流にリン脂質LPAが制御に関わる可能性を示し、論文を報告した。さらには、抗原刺激前後において、formin分子に加えて、Arp2/3の関与も阻害薬を用いた実験で検討した。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた実験結果では、T細胞皮質下アクチン細胞骨格にはforminに加えて、arp2/3も関与していることがわかった。しかし、どのような違いがあるのか、具体的にはまだわかっていない。今後はさらに超解像度顕微鏡を用いたアクチン構築の観察を行い、その違いを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度、コロナ蔓延の影響で、使用する予定の消耗品の納品に遅れが生じ、一部予定通りの実験が実施できなかった。そのため、その分の研究費を次年度に繰越すことにした。使用計画としては、昨年度コロナ蔓延の影響で納期が年度内にマニアわなった消耗品を今年度の購入に当てる予定。
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