2021 Fiscal Year Research-status Report
ATP産生制御因子の安定化によるミトコンドリア病の新規治療薬開発に向けた基盤研究
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20K07338
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 久和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30589312)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ATP / ミトコンドリア病 / タンパク質分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア病は、細胞内ミトコンドリアの電子伝達系障害によりATP産生が低下する疾患であるが、その根本的な治療法はない。研究代表者らは、心筋細胞において低酸素下でATP産生を増強し細胞保護的に働くATP産生制御因子G0S2のタンパク質分解メカニズムを明らかにし、分解を阻害することでATP産生を増強させる化合物を同定した。本研究では、ATP産生増強化合物による特異的なG0S2分解阻害メカニズムの生化学的手法による解明を目指す。 R3年度は、昨年度に明らかにしたG0S2-C末端に結合する新規因子Xの機能解析を進めた。新規因子XはG0S2の分解制御に必須なタンパク質BAG6との関連性が報告されていたため、BAG6との結合について免疫沈降法によって検討したところ、XおよびBAG6は互いに結合していることが明らかとなった。またsiRNAを用いたXのノックダウン実験では、G0S2タンパク質の上昇を認め、XとBAG6がともにG0S2のタンパク質分解に寄与していることを見出した。さらにヒット化合物がこれらの結合に影響を及ぼすことも明らかとなった。 BINDSの協力によりヒット化合物の物性改善も進めており、新たに31化合物の新規合成と活性評価を終え、いくつか高活性を示す化合物を得ている。このうちアルキン基を導入した化合物を用いて、化合物が結合したG0S2の標識実験を行った。その結果このヒット化合物は極めて特異的にG0S2の1か所のアミノ酸に共有結合していることを見出した。 また、化合物の物性としては脂溶性が高くタンパク質結合率の高いものであったが、in vivoへの投与実験が実施可能かを検討する目的で、マウスにおける薬物動態を検証し、比較的良好な薬物動態であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G0S2のC末端に結合する新規因子XがG0S2タンパク質分解に寄与する因子であることを示唆するデータが得られた。またアルキン化化合物を用いて、ヒット化合物のG0S2への特異性を見出すことができた。ヒット化合物の物性改善そのものはまだ途上であるが、薬物動態評価を実施し、マウスへの投与が可能な化合物であることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度は、まずヒット化合物を正常マウスに投与することを目標とする。ヒット化合物は脂溶性が高いため、その溶媒の検討を行う。適切な溶解方法を見出したのち、実際にマウスへ投与し各臓器でG0S2タンパク質の上昇を認めるかについて検証する。 またミトコンドリア病患者由来筋芽細胞を筋細胞へ分化させることを試みたが、低効率とコストの問題から断念し、ミトコンドリア病モデルマウスを用いた実験の準備に切り替えた。ミトコンドリア心筋症モデルマウスの入手を予定しており、心機能の安定的な評価方法を確立するとともに、ヒット化合物の試験的投与を試みて、心機能評価を行う。その心機能評価の結果を鑑みながら、実際の薬効評価のための投与スケジュールを検討する。 さらにG0S2の分解機構に寄与するタンパク質群の機能と化合物による影響を詳細に検討する。具体的にはBAG6および新規因子Xの結合タンパク質とG0S2との相互作用が化合物の投与によって、G0S2のユビキチン化反応にどのように影響を及ぼすかについて検討を進める。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Loss-of-function mutations in the co-chaperone protein BAG5 cause dilated cardiomyopathy requiring heart transplantation2022
Author(s)
Hakui H, Kioka H, Miyashita Y, Nishimura S, Matsuoka K, Kato Hisakazu, Tsukamoto O, Kuramoto Y, Takahashi Y, Saito S, Ohta K, Asanuma H, Fu HY, Shinomiya H, Yamada N, Ohtani T, Sawa Y, Kitakaze M, Takashima S, Sakata Y, Asano Y.
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Journal Title
Science Translational Medicine
Volume: 14
Pages: eabf3274
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Aberrant accumulation of TMEM43 accompanied by perturbed transmural gene expression in arrhythmogenic cardiomyopathy2021
Author(s)
Shinomiya H, Kato Hisakazu (共責任著者), Kuramoto Y, Watanabe N, Tsuruda T, Arimura T, Miyashita Y, Miyasaka Y, Mashimo T, Takuwa A, Motooka D, Okuzaki D, Matsuoka K, Tsukamoto O, Hakui H, Yamada N, Lee JK, Kioka H, Kitakaze M, Takashima S, Sakata Y, Asano Y
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Journal Title
The FASEB Journal
Volume: 35
Pages: e21994
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] p53活性化による新規大腸癌治療法の開発2021
Author(s)
徳山 信嗣,高橋 秀和, 加藤 久和, 藤野 志季, 荻野 崇之, 三吉 範克, 植村 守, 山本 浩文, 水島 恒和, 高島 成二, 土岐 祐一郎, 江口 英利
Organizer
第121回日本外科学会定期学術集会