2021 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺導管癌の新規個別化治療確立に向けた分子病理学的基盤:大規模多施設共同研究
Project/Area Number |
20K07417
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
長尾 俊孝 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (90276709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 雄一郎 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (70292430)
平井 秀明 東京医科大学, 医学部, 助教 (00770744)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 唾液腺導管癌 / EZH2 / H3K27me3 / 癌免疫微小環境 / PD-L1 / PD1 / androgen receptor / HER2 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、主に唾液腺導管癌(SDC)におけるEZH2とH3K27me3(ヒストンH3のリジンのメチル化)の機能解析を行った。 EZH2はメチル化転移酵素活性を持ち、H3K27me3を介して癌抑制遺伝子を抑制し、癌の発育・進展に寄与している。EZH2とH3K27me3の過剰発現は種々の癌で予後不良因子であるだけでなく、前立腺癌の抗AR療法と乳癌の抗HER2療法それぞれの耐性にも関与している。しかし、SDCにおけるEZH2とH3K27me3の予後や治療効果予測を含む臨床病理学的意義は明らかになっていなかった。 226例のSDCを対象に、免疫組織化学的にEZH2とH3K27me3の発現率(%)を評価し、それぞれ高発現群と低発現群に分けた。更にEZH2 Y646の機能獲得型変異の有無をサンガー法で確認した。抗AR療法群と抗HER2療法群、抗AR療法と抗HER2療法が行われていない従来治療群の3群に分けて、予後や治療効果との関連を検討した。 殆どの症例でEZH2とH3K27me3の発現が認められた。EZH2とH3K27me3の発現は正の相関を示した。抗AR療法群ではEZH2高発現症例の全生存期間(OS)・無増悪生存期間が有意に短く臨床的有用率・奏功率も低かった。同様に抗AR療法群でH3K27me3高発現症例も有意にOSが短かった。一方、抗HER2療法群と従来治療群ではEZH2・H3K27me3の発現と予後・治療効果との関連はなかった。EZH2 Y646変異を有する症例は認められなかった。 今回の検討では、抗AR療法群でのみEZH2とH3K27me3の高発現が予後不良因子であり、EZH2高発現については抗AR療法の効果不良予測因子でもあった。これらのデータは、SDCの治療戦略の発展に寄与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究内容の約2/3程度を実施し、これらの成果を主に国際誌に英文論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きSDCにおける抗AR療法や抗HER2療法の効果予測因子の探索などを行い、その成果を順次、国際誌に英語論文として報告する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも物品の費用を抑えることができ、次年度使用額が生じた。令和4年度は、この次年度使用額を、主に免疫組織化学染色や遺伝子解析、画像解析に用いる消耗品の購入に充て、研究を更に推進させる。
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Research Products
(65 results)